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あらゆる企業・組織で情報セキュリティが重要視されている昨今、まず理解すべき基本原則として「情報セキュリティの3要素(CIA)」があります。
CIAとは、Confidentiality(機密性)、Integrity(完全性)、Availability(可用性)の頭文字を取った概念です。これら3つの要素は単独で機能するものではなく、バランスよく向上させることで、堅固な情報セキュリティ体制の構築につながります。
CIAを取り入れた情報セキュリティ体制の構築には、各要素を体系的に理解し、偏りなく最適なバランスの維持が不可欠です。
本記事では、情報セキュリティの3要素「CIA」における各要素の基本的な意味や具体的な対策例と、3要素のバランスを最適化する方法について解説します。
情報セキュリティの3要素(CIA)の概要
情報セキュリティ対策を検討する際には、Confidentiality(機密性)、Integrity(完全性)、Availability(可用性)の3要素からなる、通称「CIA」が基本的な指針となります。CIAは情報の保護を総合的に実現するための重要な概念であり、3要素すべてにおいて偏りのない管理体制の構築が不可欠です。
以下では、CIAの目的・必要性および定義と、近年注目されつつある7要素の概念について解説します。
情報セキュリティの目的・必要性
情報セキュリティは、企業・組織および個人が保有する重要な情報資産を不正アクセス、漏洩、改ざん、破壊などの脅威から守り、安全に取り扱う目的があります。サイバー攻撃の高度化、リモートワークの普及などの理由により、情報漏洩・セキュリティトラブルによる業務停止などへのリスク対策は急務です。情報の機密性・完全性・可用性を確保し、社会的信用の維持および法令遵守、業務継続の実現を図るうえでも、企業・組織における情報セキュリティ対策の実施が求められます。
情報セキュリティの3要素(CIA)の定義
情報セキュリティの3要素(CIA)とは、「機密性(Confidentiality)」「完全性(Integrity)」「可用性(Availability)」の3つの要素からなる、セキュリティ対策の基本的な概念を指します。機密性は情報へのアクセス制限によって許可者のみにアクセスを絞ること、完全性は情報の改ざんを防止して正確性を維持すること、可用性は必要に応じて情報・システムが利用できる状態を意味します。
情報セキュリティの3要素CIAは、企業・組織における重要性の高い情報を適切に管理するための枠組みです。情報の改ざんおよび消失、物理的破損の抑止と可用性の維持すべてのバランスを取る考え方として、情報の取り扱い方を定義しています。
情報セキュリティの7要素とは
情報セキュリティの7要素とは、基本となる「機密性・完全性・可用性(CIA)」に加え、「真正性・責任追跡性・否認防止・信頼性」の4つを加えた、より包括的な情報セキュリティの視点です。
真正性は情報正当性の維持、責任追跡性はユーザー行動履歴の追跡、否認防止は操作の否認防止、信頼性は情報システムの安定稼働を意味します。これらは情報を正しく管理・利用するための重要な枠組みであり、情報セキュリティ3要素(CIA)を補完し、よりハイレベルなセキュリティ対策の実施において不可欠な要素です。
まずは情報セキュリティ3要素(CIA)を正確に理解し、基盤を固めたうえで補完すべき項目の検討を行う必要があります。
【情報セキュリティの3要素(CIA):】機密性(Confidentiality)とは
機密性(Confidentiality)とは、情報セキュリティの3要素(CIA)を構成する一つの要素であり、重要な情報にアクセス制限を設け、許可された人以外に漏れないよう保護する取り組みを意味します。
個人情報および機密データの流出による第三者の不正閲覧は、企業・組織に対する信頼の失墜、重大な損害につながるため極めて重要なリスク要因です。以下では、情報セキュリティの3要素のうち、機密性が求められる情報資産の例と具体的な対策例について解説します。
機密性が求められる情報資産の例
機密性が求められる情報資産とは、第三者に漏洩すると個人および企業・組織に重大な影響を及ぼす情報を指します。機密性が求められる情報は、厳格なアクセス制御、暗号化などにより保護する必要があります。機密性が求められる情報の具体例は以下のとおりです。
- 個人情報:顧客の氏名・住所・連絡先
- 企業機密:未発表の製品情報や技術仕様
- 内部文書:社内の会議録や経営方針
- 人事情報:従業員の給与・人事評価
- 契約書・請求書類:顧客、取引先関連
- 認証情報:ID・パスワード、APIキー、暗号鍵
- 財務情報:決算前の財務諸表、予算計画、内部統制資料
- 営業秘密:商品開発情報、製造ノウハウ、技術仕様、マーケティング戦略
これらの情報は、情報漏洩が発生した際に企業・組織に対する信用失墜、および法的リスクを招くため、高い機密性が求められます。
具体的な対策の例
機密性が求められる情報資産を保護するには、多層的な対策が不可欠です。具体的な対策例は、以下のとおりです。
- アクセス制御の強化:ユーザーごとに閲覧・編集権限を設定、最小限のアクセス権限に制限する(最小権限の原則)
- パスワード管理の徹底:複雑なパスワードの設定、複数のシステムでの共有禁止、使いまわし禁止、多要素認証(MFA)の導入など
- 通信の暗号化:VPNの利用、HTTPSやSSL/TLSによる暗号通信で情報の盗聴を防止
- 物理的セキュリティ対策:サーバールームや機密資料の保管場所に施錠、入退室管理の実施
- 情報の持ち出し制限:USBメモリや外部ストレージの使用制限、私有アドレス等社外へのメール送信制限
- 情報漏洩対策ソフトの導入:DLP(Data Loss Prevention)やログ監視ツールの活用
- 社員教育の実施:情報管理の重要性や取り扱いルールについて定期的な研修を実施
機密性は、情報漏えいリスクの低減に欠かせない要素です。対策の実施に加え、社員教育を通じた情報管理に対する従業員の意識向上を図る必要があります。
【情報セキュリティの3要素(CIA):】完全性(Integrity)とは
完全性(Integrity)とは、情報が正確かつ完全な状態で保たれていることを指します。外部からの不正な改ざん、および内部の誤操作によるデータ損傷・消失を防ぐために不可欠な要素です。
業務上の意思決定、法的手続きにおいて、情報の正確性維持は企業・組織に対する信頼性にも直結します。以下では、情報セキュリティ3要素のうち、完全性が求められる情報資産の例と対策の具体例について解説します。
完全性が求められる情報資産の例
完全性が求められる情報資産とは、内容の正確性と一貫性が不可欠であり、誤り・改ざんが業務および経営判断に重大な影響を及ぼす情報を指します。完全性が求められる情報資産の例は、以下のとおりです。
- 財務情報(決算書・仕訳帳など):税務申告・投資判断に影響し、重大な法的リスクが生じる情報
- 契約書・申請書類:契約無効・紛争の原因となる情報
- 顧客情報データベース:請求ミスやサービストラブルを招く情報
- 医療記録(カルテ・処方箋など):患者の生命や健康に直接影響を与える情報
- ソースコード・設定ファイル:システムの動作不良や脆弱性の発生につながる情報
- 勤怠・労務管理データ:給与計算や労働法上の問題に直結する情報
- 研究データ・実験記録:学術的・技術的信用を損ねる情報
- 監査ログ・操作履歴:インシデント調査や内部統制の根拠として不可欠な情報
上記のような情報は、企業・組織の信頼性および業務遂行の正確性向上、法的証拠として、厳重な管理と保護が求められます。
具体的な対策の例
完全性を確保するためには、情報の正確性および一貫性を維持するための多面的な対策の実施が求められます。具体的な対策例は、以下のとおりです。
- ハッシュ値の利用:ファイルやデータの変更有無を検出するために、MD5やSHA-256などのハッシュ関数を用いる
- チェックサムやCRCによる検証:通信・データ保存時に誤りを検出・修正する仕組みの構築
- バージョン管理システムの導入:ソースコード・文書の変更履歴の記録と誤更新の防止
- データ入力時のバリデーションチェック:入力内容の形式および整合性確認の自動化、誤入力の抑止
- アクセス制御とログ記録:編集権限の制限と操作履歴の記録
- 定期的なデータ整合性チェック:データベースの整合性確認および自動スクリプトによる検査の実施
完全性は、情報の改ざん・悪用によるリスクの低減に欠かせない要素です。単一の対策に留まらず、管理体制・履歴の記録・権限の制限など、多角的な対応を講じる必要があります。
【情報セキュリティの3要素(CIA):】可用性(Availability)とは
可用性(Availability)とは、情報セキュリティの3要素(CIA)のうち、必要に応じて情報およびシステムへ支障なくアクセスできる状態の維持を指します。業務の継続性およびサービスの提供における停滞を抑止するには、システム障害および災害、サイバー攻撃などへの備えを含む可用性の確保が不可欠です。とくに医療や金融、公共インフラなどでは高い可用性の維持が求められます。以下では、可用性が求められる情報資産の例、対策の具体例について解説します。
可用性が求められる情報資産の例
可用性が求められる情報資産として、必要なときに常に利用可能な状態を求められる情報およびシステムが挙げられます。可用性が求められる情報資産の例は、以下のとおりです。
- 業務基幹システム(ERP・会計システムなど):日常業務全体が停止するリスクがある情報資産
- 電子カルテ・医療情報システム:24時間体制の医療現場での診療や治療に不可欠な情報資産
- オンラインバンキング・決済システム:個人および企業・組織の資金決済に大きな支障をきたす情報資産
- 交通管制・公共インフラの制御システム:交通事故・社会的混乱を招く可能性がある情報資産
- ECサイト・予約システム:売上機会の喪失・顧客離れにつながる恐れがある情報資産
- 災害情報・避難システム:人命に関わるリスクがある緊急時に必要な情報資産
- 社内ネットワーク・メールサーバー:業務連絡・データ共有に関わる情報資産
- クラウドストレージ・ファイル共有サービス:社内外のデータ連携に必要な情報資産
これらの情報資産は、運用の停止が困難であり、可用性の維持が事業継続および社会的責任に直結する重要性の高い項目です。適切な管理・維持体制の構築により、可用性の維持に努める必要があります。
具体的な対策の例
情報セキュリティにおける可用性の維持は、企業・組織運営のみならず、社会的責任および人名にも影響を及ぼす重要な施策です。可用性を維持するための具体的な対策例は、以下のとおりです。
- システムの冗長化(冗長構成):サーバーやネットワーク機器の二重化
- 定期的なバックアップの実施:データを定期的に別環境へ保存し、損失・消失に備える
- 障害発生時の復旧手順(BCP・DRP)の整備:業務継続計画(BCP)・災害復旧計画(DRP)を策定・訓練する
- クラウドサービスの活用:高い可用性を提供するクラウド環境に業務システムを移行する
- DDoS(Distributed Denial of Service)対策の導入:サイバー攻撃によるサービス停止を防ぐための対策実装(WAF・CDN経由のトラフィック分散など)
- リソースの監視とアラート体制:サーバー・ネットワークの負荷状況に対する常時監視体制の構築
可用性は、常時・非常時を問わず、システム稼働率の向上に欠かせない要素です。複数の対策の組み合わせにより、突発的なシステム障害および災害、サイバー攻撃などによる業務停止リスクの最小化につながるでしょう。
情報セキュリティにおける3要素(CIA)のバランスを最適化する方法
情報セキュリティの3要素(CIA)は、独立して機能するのではなく相互関係により補完し合います。3要素のバランス最適化は、情報セキュリティ体制の構築に不可欠な要素です。CIAのバランスを最適化するには、以下の点に留意しておく必要があります。
機密性・完全性・可用性における相互関係の把握
情報セキュリティにおける3要素(機密性・完全性・可用性)のバランス最適化には、相互関係の把握が不可欠です。単独で強化した場合、ほかの要素を損なう恐れがあります。情報の重要度・利用目的に応じて、3要素のバランスの適切な評価・調整の実施は、セキュリティ対策の要として重視されます。
リスクアセスメントに基づいた優先順位の決定
情報セキュリティ対策の効果的な実施には、リスクアセスメントに基づいた優先順位の決定が肝要です。各情報資産の脅威および脆弱性を洗い出し、被害の大きさと発生可能性からリスクの大きさを評価します。評価をもとに、ハイリスク項目から順に対策を講じれば、限定的なリソースを効率的に活用でき、機密性・完全性・可用性のバランス最適化にも寄与します。
情報セキュリティ3要素(CIA)のバランス最適化は、情報セキュリティの強化に不可欠です。最適なバランスの維持により、セキュリティ対策と業務効率性の両面から、安定した企業・組織運用体制の構築を実現できるでしょう。
総括
本記事では、情報セキュリティの基本3要素である機密性・完全性・可用性(CIA)について、役割と具体的な対策例を解説しました。3要素は相互に関係しており、最適なバランスの維持・管理が不可欠です。情報セキュリティは、企業・組織の信頼性確保とリスク低減に直結するため、適切な対策を講じる必要があります。
この記事の編集者

QFSjapan編集部
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