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ISO認証の取得は、企業・組織がISO規格に基づいたマネジメント体制を構築・運用し、第三者機関の審査によって適合していると認められた状態です。
ISOは品質マネジメントに関するISO9001、環境マネジメントに関するISO14001、情報セキュリティマネジメントに関するISO27001など、多様な規格が策定されています。経営方針・戦略に応じた適切なISO規格の選定・認証の取得は、企業活動における多くのメリットにつながります。
一方で、ISO取得の意義が見出せず、取得の是非判断に迷う企業が一定数見られるのも実情です。本記事では、ISO認証の基本的な概要や目的に加え、ISO認証の取得によって得られるメリットおよびデメリットについて解説します。
ISO規格の基本情報
ISO規格は、国際標準化機構(ISO)が策定する世界共通の枠組みです。品質・環境・情報セキュリティなど、さまざまな分野におけるマネジメントの規格として広く活用されています。以下では、ISO規格の基本的な情報について解説します。
ISO規格の概要・目的
ISO規格は、国際標準化機構(International Organization for Standardization)が策定する、製品・サービス・マネジメントに関する体制構築の国際的な枠組みです。ISO規格には、国・業種を問わず共通の基準を設け、取引の円滑化および品質の向上、安全性・信頼性の確保につなげる目的があります。
ISO規格への準拠は、業務の標準化・効率化の促進、国際的な信用力向上にも効果的です。ISO規格の導入は単なる認証取得にとどまらず、継続的な改善を通じて、企業・組織内のマネジメント体制の構築、ひいては企業価値の向上にも寄与します。
ISO規格の主な種類
ISOには、目的に応じた多様な種類の規格があります。企業活動でよく用いられる代表的なISO規格の種類は、以下のとおりです。
ISO規格の種類 | 概要 |
---|---|
ISO9001(品質マネジメント) | 製品・サービスの品質を安定させ、高水準を維持しながら提供するための仕組み。顧客満足度・信頼性向上を目的としている、もっとも普及している規格。 |
ISO14001(環境マネジメント) | 環境保全と法令順守を両立させる仕組み。廃棄物削減・省エネ対策など、持続可能な経営を支援する規格。 |
ISO27001(情報セキュリティマネジメント) | 機密情報・個人情報などを保護するためのマネジメント規格。サイバー攻撃・情報漏えいのリスク管理にも有効。 |
ISO45001(労働安全衛生マネジメント) | 労働災害の予防および健康的な職場づくりを目的とした規格。従業員の安全と福祉を守る体制づくりを支援する。 |
これらの規格は、業種や課題に応じて単独または統合的に導入されることが多く、企業の信頼性向上やリスク管理に大きく貢献します。
ISO認証される仕組み
ISO認証は、企業・組織がISO規格に適合したマネジメントシステムを構築・運用していることを、第三者機関が審査・確認し、公式に証明する仕組みです。ISO認証を受けるには、企業・組織が必要なISO規格に基づいてルール・手順を整備し、実際に運用します。
その後、ISOの審査機関による「認証審査(初回審査)」を受け、ISO規格の要求事項に適合していれば認証書が発行される仕組みです。認証取得後も最低年に1回実施される定期的な維持審査(サーベイランス審査)、および3年ごとの更新審査(再認証審査)を通じて、規格に準拠したマネジメントシステムの継続的な運用・改善を続ける必要があります。
ISO認証の取得は、単なる形式的な取得に留まらず、実効性あるマネジメント体制の構築・維持に寄与します。また、ISO規格は、日本だけでなく世界中で取得されている国際的な指標です。顧客・取引先に対して、企業・組織が信頼性を示す手段として広く活用されています。
ISO認証を取得するメリット
ISO認証を取得するメリットは、以下の6項目です。
- 公共事業での入札機会の増加や優位性確保
- 顧客・取引先からの信頼性向上
- 業務体制の強化
- 業務の標準化と効率化
- コンプライアンスの強化
- 社内意識の向上
以下では、ISO認証を取得するメリットについて解説します。
公共事業での入札機会の増加や優位性確保
ISO認証の取得は、公共事業の入札機会の増加や優位性確保につながります。国・自治体、公共団体が発注する案件では、品質管理・情報セキュリティ、環境対策といった分野での体制整備が重視されており、入札要件にISO9001およびISO14001、ISO27001などの認証が求められる、あるいは推奨される場合も少なくありません。
ISO認証の保有は、第三者機関によって適正な管理体制があると評価されている証であり、信頼性の高さ・コンプライアンス意識を客観的に示す材料です。また、同程度の価格・実績を持つ競合企業との比較においても、ISO認証の有無が選定基準となる可能性があり、ビジネスチャンスの拡大につながる重要な要素でもあります。
顧客・取引先からの信頼性向上
ISO認証の取得は、顧客・取引先に対して、国際的に認められた管理体制を備えている企業・組織であることを示す有効な手段です。品質管理・情報セキュリティ、環境配慮などの各分野において、企業・組織がISO規格に準拠したルールを整備し、実際に運用していることが第三者機関によって認証されるため、信頼性の証明になります。
ISO認証を取得することで「一定の品質が担保されている」「情報の取扱いが適切で安心できる」などの安心感・信頼感を顧客に与え、新規取引および長期的な関係構築にも有利に働きます。また、ISO規格に準拠した品質・リスク管理の徹底などの体制構築・維持は、取引先選定時に有利に働くため、企業競争力の向上にもつながります。
業務体制の強化
ISO認証の取得は、単に外部への信頼性を示すだけでなく、企業・組織内部の業務体制を根本から見直し、強化する大きな契機です。ISO規格では、業務手順および責任分担、リスク対応などを明確に定めたうえでの標準化が求められるため、属人化を改善する効果が見込まれます。
ISO9001なら顧客満足や品質向上、ISO27001なら情報セキュリティ事故の発生予防など、ISO規格の種類に応じて強化される業務体制に差異があるため、規格の選定も肝要です。また、ISO規格に適合する目的で、内部監査・マネジメントレビューなど、定期的な評価体制も取り入れるため、継続的な改善サイクル(PDCA)が自然と組織に根付きます。
これにより、ミス・トラブルの再発防止、意思決定の迅速化、企業・組織全体の情報共有の円滑化なども実現可能です。結果として、効率的かつ安定した業務運営につながります。ISO認証は、形式だけでなく実務に活かすことで、企業の基盤強化に直結する制度です。
業務の標準化と効率化
ISO認証を取得する過程では、業務手順・ルールを明確にし、全社的に統一する必要があります。統一された環境下では、担当者によって進行方法に差異があった業務が標準化されるため、誰が対応しても一定の品質・成果が得られる体制が整うのも、ISO認証を取得するメリットです。
また、重複作業の見直しにより、業務プロセスの簡素化、業務の効率化も実現します。標準化された業務は、新人教育の時間短縮・引き継ぎの円滑化にも寄与するため、ISO認証の取得は企業・組織全体の生産性向上にも効果的です。
業務の流れが可視化されれば、各プロセスの問題点の発見が容易になり、マネジメント体制の継続的な改善活動の土台にもなります。ISO認証は、業務の標準化と効率化を実現するための有効なフレームワークとして、企業活動の基盤強化に貢献します。
コンプライアンスの強化
ISO認証の取得により、企業・組織におけるコンプライアンス(法令遵守)体制の強化が図れるメリットもあります。ISO規格では、法規制および顧客ニーズの把握と遵守が明確に求められており、関連する法律・規制の洗い出し・体制の整備が不可欠です。ISO規格に準拠したマネジメント体制の整備により、業種特有の法的リスク・社会的責任に対して自律的に対応する仕組みが構築されます。
また、規格が定める内部監査・是正処置などのプロセスを通じて、コンプライアンス違反の早期発見・是正が可能になるため、企業のガバナンス体制強化にも効果的です。とくに情報漏えい、労働災害、環境汚染といった、企業経営を根幹から揺るがす重大なリスクへの迅速な対応体制が整うため、社会的信用の向上・企業の持続可能性確保にも大きく貢献します。
社内意識の向上
ISO認証の取得は、社員一人ひとりの業務に対する意識向上にも寄与します。ISOでは、業務手順の明確化および目標管理、内部監査の実施など、企業・組織全体で統一されたルールと役割の明確化が求められます。これにより、社員は自分の業務が企業・組織の品質・安全性、情報管理に対して、どのように貢献しているかを自覚でき、責任感・当事者意識が向上します。
ISOの要求事項には、教育・訓練の実施が規定されているため、社員の定期的な意識・認識の向上、スキルアップ、知識習得の促進による企業・組織全体の業務レベル向上にもつながります。業務改善に対する参加意識の醸成は、現場からの改善提案の活発化、より良い企業・組織運営を目指す風土の形成においても不可欠な要素です。ISO認証は、単なる制度ではなく、社員の意識改革と行動変容を促す枠組みとしても企業・組織経営に貢献します。
ISO認証を取得するデメリット・注意点
ISO認証を取得するデメリット・注意点は、以下の3項目です。
- 業務負担の増加
- 審査費用支出による経費の上昇
- 定期的な審査への対応負担
ISO認証を取得するデメリット・注意点について、マネジメントシステム導入時に意識・配慮すべき点を踏まえて解説します。
業務負担の増加
ISO認証を取得・維持するには、必要に応じた文書の作成および記録の保存、内部監査・マネジメントレビューの実施などの業務が追加されます。とくに経営資源に限りがある中小企業では、既存業務との整合性を確保する必要となり、リソースの圧迫につながりやすい点が課題です。ISO認証取得を目的とするあまり、実務に合わない形式的な運用が続いた場合、対応業務の増加により、通常業務の効率低下をまねくリスクもあります。ISO認証を取得する際は、マネジメント体制を現場業務にどのように落とし込むか、業務負担の増加に備える仕組みづくりが不可欠です。
審査費用支出による経費の上昇
ISO認証の取得・維持には、審査機関への費用がかかり、経費が増加する懸念があります。初回の登録審査だけでなく、最低年に1回実施される維持審査(サーベイランス審査)、および3年ごとの更新審査(再認証審査)にもコストが発生するためです。企業・組織の規模・業種、ISOの適用範囲によっては、審査費用が高額になる場合もあります。また、コンサルタントを依頼する場合の費用、社員教育・訓練、文書整備の人件費など、間接的なコストも度外視できません。ISOの導入前の段階で、必要経費の予測を立てたうえで、継続負担を考慮する必要があります。
関連記事:ISO規格の審査費用(取得審査・維持審査・更新審査)の目安|認証取得・維持にかかる費用を解説
定期的な審査への対応負担
ISO認証を維持するには、初回取得後も最低年に1度実施される「維持審査(サーベイランス審査)」および3年ごとの「更新審査」への対応が不可欠です。これらの審査では、マネジメントシステムの運用状況・改善の取り組みが継続的に確認されるため、事前準備・関係部門との調整、書類の整備などに負担がかかります。
実務担当者にとっては、通常業務と並行した対応が求められるため、業務負荷が増大しやすい点が課題です。複数のISO認証を取得する場合は、統合的な運用を視野に入れて、審査対応の負担軽減に努める必要があります。
関連記事:サーベイランス審査(定期審査)とは?ISO認証の仕組みや審査の流れと対応方法を解説
関連記事:ISO9001とISO27001の違いを解説|統合する方法とは?
総括
本記事では、ISO認証の概要および目的、取得によるメリット・デメリットについて解説しました。ISO認証は、国際的な基準に適合したマネジメント体制を構築・運用していることを示すものであり、取得によって信頼性向上・業務効率化など、多面的な効果が見込まれます。ISO認証取得の効果を最大化するためには、現場の業務負担軽減策および必要な経費負担の事前検討が必要です。
この記事の編集者

QFSjapan編集部
ISO審査・認証サービスを提供する「株式会社QFSjapan」が運営。ISOを新たに取得する方や、すでに運用中の方のお悩みや知りたいことを中心にお届けします。ISOの専門家として、信頼できる情報をISO初心者の方でも分かりやすくお伝えできるよう心掛けていきます。