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公共工事の入札にISO認証の取得は有利?経審(経営事項審査)における加点の仕組みとは

ISO認証の取得は、国際規格に基づいた管理体制を証明するだけでなく、経審(経営事項審査)における加点、総合評価方式入札での優位性にも直結する要素です。

公共工事の入札に参加する建設業者にとって、経営事項審査(経審)は受注可能性をも左右する極めて重要な手続きであり、ISO認証の取得により、入札条件の充足および信頼性の向上にも寄与します。

本記事では、公共工事の入札において、ISO認証取得は有利に働くのか、経審(経営事項審査)における加点の仕組み、および建設業の公共事業入札において役立つISO規格の種類について解説します。

ISO認証とは

ISO認証とは、国際標準化機構(ISO)が定めた国際規格に基づき、企業・組織のマネジメント体制が適切に構築・運用されているかを第三者の認証機関が審査・証明する制度です。

品質マネジメントシステムのISO9001、環境マネジメントシステムのISO14001、情報セキュリティマネジメントシステムのISO27001、労働安全衛生マネジメントシステムのISO45001など、多様な規格があります。

ISO認証の取得により、国際規格への準拠を示せるほか、業務プロセスの改善、取引先および顧客からの信頼獲得など、多様なメリットが見込まれます。

公共工事を請け負うための入札方法

国および自治体などの発注者が公共工事を発注する際、事業者を公平に選定する仕組みとして入札方式が用いられます。

一般競争入札・指名競争入札・企画競争入札(プロポーサル方式)などがあり、これらは透明性の確保、適正価格での契約、品質維持を目的としているプロセスです。以下では、公共工事を請け負うための入札方法について解説します。

一般競争入札

一般競争入札とは、発注者が公告を行い、あらかじめ定められた資格要件を満たすすべての事業者に入札の機会を与える方式です。透明性と公平性に優れており、競争の実施により適正価格での契約が実現しやすいという特徴があります。

一般競争入札の参加資格として、建設業許可、経営事項審査の評価点、過去の施工実績などが求められる場合があります。開かれた入札方式である反面、企業間での競争が激しくなる傾向があります。

指名競争入札

指名競争入札とは、発注者があらかじめ選定した事業者のみに入札を認める方式です。選定基準として、過去の施工実績および技術力、地域における信頼性などが考慮されます。

入札に参加可能な事業者が限定されるため、一般競争入札に比べて落札の可能性は高まる一方、そもそも指名されなければ参加できないという制約があります。発注者側の視点では、信頼できる企業の指名により、施工品質および工期管理への安心感を得られるのが利点です。

企画競争入札(プロポーサル方式)

一般競争入札・指名競争入札以外の入札方式として、企画競争入札が挙げられます。企画競争入札とは、価格のみを基準とするのではなく、技術提案および施工計画の内容なども評価対象とする方式を指します。代表的な例は、「総合評価落札方式」です。

一般競争入札や指名競争入札等の最低価格落札方式は、もっとも低い価格を提示した事業者が落札する仕組みである反面、過度な低価格競争による品質低下の懸念が生じます。そのため近年では、施工体制および環境配慮への取り組みを含めた、総合的な評価を実施する総合評価落札方式が主流となっています。

ISO認証取得で入札が有利になる要因

ISO認証取得で入札が有利になる要因として、以下の3項目が挙げられます。

  • 参加資格・入札条件のクリア
  • 総合評価落札方式における評価向上
  • 経審(経営事項審査)での加点

以下では、ISO認証取得で入札が有利になる要因について解説します。

参加資格・入札条件のクリア

公共工事および官公庁に関連する一部の入札では、ISO9001・ISO14001などの国際規格の認証取得が参加資格・入札条件として定められている場合があります。

とくに、品質マネジメントシステム・環境マネジメントシステムに関する認証は、信頼性・業務遂行能力の高さを示す根拠として提示が求められる傾向にあります。

認証を保有していなければ、入札参加資格および条件を満たせない場合もあるため、ISO認証の取得は公共工事の入札競争において優先度の高い項目です。ISO認証の取得は、入札参加機会の拡大、公共工事受注の可能性向上に寄与します。

総合評価落札方式における評価向上

総合評価落札方式では、価格だけでなく技術力および管理体制、環境への配慮などの要素も総合的に評価して落札者を決定します。

特に品質マネジメントシステムのISO9001や環境マネジメントシステムのISO14001は、品質確保や環境負荷低減への取り組みを示すものとして評価対象となりやすい規格です。また、案件によっては労働安全衛生(ISO45001)や情報セキュリティ(ISO27001)が評価の対象となることもあります。

認証を通じて体系的な管理体制の整備状況を示せるため、信頼性の裏付けとなり、他社との差別化においても優位性を担保できます。ISO認証の取得は、価格面だけでなく総合的な競争力の向上が実現するため、落札の可能性を広げるうえで有効な手段です。

経審(経営事項審査)での加点

公共工事を受注するには、国土交通省または都道府県知事が登録を行う経営事項審査(経審)を受け、総合評点(P点)の算出を受ける必要があります。ISO認証の取得は、経審における「その他の審査項目(社会性等)」で加点対象とされる場合があります。

数あるISO規格のなかでも、とくにISO9001・ISO14001は評価点の向上が見込まれるため、総合評点(P点)の底上げにおいても有効です。評点が高くなれば入札参加資格の幅が広がり、大規模工事および競争性の高い案件の入札における優位性の確保にも寄与します。

経審は入札参加の前提条件となるため、ISO認証の加点効果は長期的な受注力強化に直結します。

関連記事:ISO取得のメリット・デメリットとは?企業経営にもたらす効果を解説

ISO認証取得による経審(経営事項審査)の加点の仕組み

ISO認証を取得すると、公共工事の入札に必要な経審(経営事項審査)で加点が与えられます。経審(経営事項審査)とは、建設業者が公共工事の入札に参加するうえで必須の審査制度です。建設業法に基づき、国土交通大臣または都道府県知事が実施します。

ISO9001・ISO14001などの認証を取得すると「W点(その他の審査項目)」で評価されます。加点の具体的な点数は国交省の審査基準により定められており、ISO認証の種類や組み合わせによって上限や算定方式が異なります。一般的には、ISO9001・ISO14001を取得していることでW点が向上し、結果として総合評定値(P点)の底上げにつながります。

経審(経営事項審査)において取得したP点は、入札ランク・参加資格に直結するため、ISO認証の取得は受注可能な案件規模を広げ、入札競争力を高める重要な戦略手段となります。

建設業の公共工事入札に役立つISO規格の種類

多様なISO規格があるため、公共工事入札時の優位性確保を目的としてISO認証を取得する場合は、建設業に関連するISO規格の選定が不可欠です。以下では、建設業の公共工事入札に役立つISO規格の種類を紹介します。

ISO9001(品質マネジメントシステム)

ISO9001は、品質マネジメントシステムに関する国際規格です。ISO9001認証の取得は、企業・組織における安定した品質の製品およびサービス提供に関する管理体制が、国際規格に準拠している旨を対外的に示すうえで有効な手段です。

建設業においては、施工品質の均一化、顧客満足度の向上に直結する規格のため、公共工事の入札において高く評価される傾向にあります。ISO9001の要求事項に適合した品質管理体制が構築されるため、信頼性の高い事業者として認められる可能性が高まります。

また、入札条件にISO9001の取得が明示される場合もあり、公共工事の入札を予定している建設業において、取得が推奨される代表的なISO規格です。

ISO14001(環境マネジメントシステム)

ISO14001は、環境マネジメントシステムに関する国際規格です。ISO14001認証の取得は、企業・組織が環境負荷の低減、および持続可能な資源利用に向けた取り組みを計画的に実施している証明となります。

建設業は、廃棄物の発生、騒音・エネルギー使用など環境に与える影響が大きいため、ISO14001認証の取得によって、環境に配慮する姿勢は高く評価される傾向にあります。公共工事では、環境配慮が求められる場面が多く、ISO14001の認証を取得している企業は、総合評価落札方式における加点の対象です。

ISO14001認証の取得は、公共工事入札において、競合他社との間で優位性の確保に寄与します。加えて、企業・組織の社会的責任を果たす姿勢を外部に示せるため、企業・組織に対する信頼性向上を図るうえでも有効な手段です。

ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)

ISO45001は、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。職場における労働災害、および健康障害を防止する体制の整備が評価されます。

建設業は、事故・災害のリスクが高いため、ISO45001認証の取得によって、安全管理に対する真摯な姿勢を示す必要があります。ISO45001認証の取得は、労働安全衛生に対する取り組みを第三者機関によって評価・承認されている証明であり、発注者からの信頼獲得にも有効です。

公共工事の入札においては、施工体制の信頼性が重視されるため、ISO45001の取得は総合評価落札方式における評価の向上に寄与する手段といえます。

ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)

ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格です。ISO27001認証の取得により、企業・組織が情報資産を適切に管理し、セキュリティリスクを低減する管理体制の整備状況を対外的に示せます。

建設業では、工事設計図、契約情報、個人情報などの重要な情報を扱うため、情報漏えい防止および不正アクセスへの対策が不可欠です。ISO27001認証を取得すれば、公共工事入札における情報管理能力の評価が高まり、競合他社との差別化および優位性の確保において有効な一手となります。

とくに近年は、公共工事でも情報セキュリティの重要性が高まっています。ISO27001認証の取得は、企業・組織に対する信頼性および落札率向上にも直結する重要な手段です。

関連記事:ISO規格の種類一覧|品質・環境・情報セキュリティなど主要規格を解説

総括

本記事では、ISO認証の取得が公共工事の入札に有利になる要因、経審(経営事項審査)の加点の仕組み、建設業の公共工事入札に役立つISO規格の種類について解説しました。

ISO認証の取得は、公共工事の入札参加に必要な条件を満たすだけでなく、総合評価や経審における加点を通じて受注可能性を高める重要な要素です。

品質・環境・安全・情報管理といった多面的な信頼性を示せるため、競合との差別化にも直結します。公共工事の受注力強化を図る建設業者にとって、ISO認証の取得は戦略的な投資手段の一つです。

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