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ISMS認証の取得企業数はどれくらい?検索方法・取得するメリットについて解説

デジタル化の進展に伴い、企業活動における情報資産の管理体制は重要性を増しています。

取引・委託業務の中で「情報セキュリティへの信頼性」が評価対象となる場面も増加しており、幅広い業種・業態で管理体制の高さを証明する手段として注目されているのが、第三者認証制度であるISO27001の情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証です。

本記事では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証の取得企業数および取得企業の確認方法、導入によって得られる実務的なメリット、さらに業種別の取得傾向について整理、解説します。

ISMS認証の取得企業数は?

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証の取得企業・組織数は、世界で48,671件以上にのぼります。(2023年度時点)
日本国内では、2024年12月時点で8,000以上の企業・組織で取得されています。

参照:ISO調査2023レポートの結果|certiget
参照:一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター (ISMS-AC)

ISMS認証は、国際標準化機構(ISO)が定めた情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格ISO27001の要求事項に適合していることで取得できます。

ISMS認証は、情報資産を体系的に保護するために企業・組織が構築した管理体制が、国際基準に準拠している証明として明示できます。企業・組織は、国際規格に適合する管理体制の構築を外部に示せるため、信頼性向上、取引要件の充足、リスク管理水準の強化に寄与する取組みとして、取得価値が高い制度です。

ISMS認証の取得企業を検索・確認する方法

ISMS認証の取得企業を確認したい場合、掲載サイト内での検索、対象企業で認証マークを探す方法が一般的です。以下では、ISMS認証の取得企業を検索・確認する方法について、具体的な手段を解説します。

情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)のサイト内検索

ISMS認証の取得企業を確認する方法は、情報マネジメントシステム認定センター(以下ISMS-AC)が提供する認証組織検索システムの利用です。ISMS-ACは、日本国内のISMS認証の審査を実施するISO認証機関を認定しています。

認証組織検索システムには、ISMS認証企業・組織が登録されています。企業・組織名、所在地、認証範囲(登録範囲)、認証登録番号、認証機関名などで検索可能です。認証範囲の詳細も公開されており、取引先のセキュリティ管理体制の確認、競合調査の際にも有用です。公的データベースとして、誤情報が含まれない点に信頼性がありますが、ISMS認証を取得している一部の企業・組織が、意向により公開されていない点に注意が必要です。

また、認証件数は少ないものの、日本適合性認定協会(以下JAB)も認定機関であり、同様にISMS認証企業・組織が登録されている認証組織検索システムを公開しています。

認証機関の公開情報を確認

ISMS認証を付与する認証機関は、認証を発行した企業・組織の情報を公開している場合が多くあります。各認証機関のサイトには、認証組織一覧、認証範囲、発行日、有効期限などが掲載されており、企業・組織ごとの認証状況を確認することが可能です。

認証機関によっては、認証書PDF、認証範囲の詳細、更新履歴などを個別に公開している場合もあります。公開内容は認証機関によって差異がありますが、認証取得状況を確認するうえで有効な手段です。非掲載企業・組織もあるため、認証機関の公開情報を確認したのち、当該企業・組織のホームページで改めて確認する必要があります。

なお、SCC(カナダ)、UKAS(イギリス)、ANAB(アメリカ)等海外の認定機関に認定された認証機関で認証を得た企業の情報は、それぞれの認定機関のサイトで公開されているのが一般的です。

企業・組織のホームページ・コーポレートサイトを確認

企業・組織のホームページ・コーポレートサイトを参照するのも、ISMS認証の情報を確認する手段です。多くの企業・組織が、ISMS認証を取得した際にホームページやコーポレートサイトで認証取得を周知します。

とくに、会社・組織概要、品質・セキュリティ方針、コンプライアンス情報などに関連するページで、認証登録番号および認証範囲、適用規格(ISO27001)などを認証ロゴとともに明記している場合が多くあります。企業・組織が取引先および顧客に対して、情報セキュリティ対策の取り組みを示す目的で公開しているものです。

ただし、最新情報の更新が反映されていない場合もあるため、認証機関・ISMS-ACの公開情報と照合したうえでの確認が望まれます。ホームページによる確認は、企業・組織の取り組み姿勢、情報公開の正確性を把握する手段としても有効です。

パンフレット・広報資料を確認

ISMS認証の取得の有無を確認する場合、企業・組織が作成するパンフレット、会社案内、サービス説明資料、採用向けの広報資料などを確認する手段もあります。ISMS認証取得を示すロゴマーク、認証登録番号などが記載される場合が多く、信頼性を示すためにISMS認証を対外的にアピールする傾向があります。

印刷物の場合、更新頻度の関係で最新の認証情報と一致しないケースがあるため、認証機関およびISMS-ACのデータとの照合が不可欠です。広報資料は企業・組織の情報セキュリティ管理における、取組み姿勢を把握する参考材料としても活用できます。

ISMS認証を取得するメリット

ISMS認証を取得するメリットは、以下のとおりです。

  • 情報セキュリティ体制の強化
  • 情報漏えい・サイバー攻撃等のリスク低減
  • 情報資産の重要度明確化による管理効率の向上
  • 入札・取引条件を満たすための体制整備
  • 社員のセキュリティ意識向上

以下では、ISMS認証取得に取組むメリットを、取得していない場合と比較して紹介します。また、取得後に見込まれるメリットを含めISMS認証の取得自体の効果についても解説します。

情報セキュリティ体制の強化

ISMS認証の取得は、企業・組織全体の情報セキュリティ体制を体系的に強化するメリットが見込まれます。ISO27001の要求事項に基づき、情報セキュリティ方針の整備、リスクアセスメントの実施、管理策の選定と運用など、統一的な管理体制の構築が可能です。

管理策・評価基準が明確化されるため、担当者に依存する属人的な運用が排除され、継続的に維持・改善可能な仕組みが形成されます。また、内部監査と外部審査の定期的な実施を通じて、対策が形骸化していないか実効性を客観的に評価できる点もメリットです。

情報資産の管理・保護に関する管理策が明示されれば、従業員全体の行動基準が統一され、部門・部署によって差異のない安定した管理基盤が確立されます。情報セキュリティ対策を経営レベルの課題として従業員全員が認識し、企業全体の管理能力底上げにも好影響を与えます。

情報漏えい・サイバー攻撃等のリスク低減

ISMS認証の取得は、情報漏えい・サイバー攻撃の脅威に対するリスク低減の体系的な実現を可能とするメリットが見込まれます。ISO27001の要求事項では、アクセス管理、ネットワーク・システム保護、バックアップ、ログ監視、外部委託先管理など、多様なリスク領域に対する管理策の実施が求められます。

認証取得・維持のために不可欠な内部監査・外部審査を通じて、これらの管理策が適切に整備され、運用されているかを継続的に点検できるため、脆弱な領域の早期発見および改善に寄与する体制の構築につながります。

また、インシデント対応プロセスの整備により、有事の際の初動対応、復旧作業が迅速化するため、被害の拡大防止にも効果が見込まれます。外部審査を通じて情報セキュリティ対策の実効性が評価されるため、長期的に安全性が高い管理体制の維持に有効です。結果として、情報資産を取り巻く多様な脅威に対して、最新かつ最善の管理体制へ向けた改善をつねに実施するサイクルが生まれ、堅牢な防御体制が確立します。

情報資産の重要度明確化による管理効率の向上

ISMS認証の取得過程では、情報資産の洗い出し、価値評価、リスク分析を体系的に行うため、各資産の重要度を客観的に把握できるメリットも見込まれます。リスクに応じた優先順位付けが可能となり、必要な管理策を優先度に応じて効果的に配分できる体制が整備されるためです。

重要度が高い情報資産には厳格なアクセス管理・暗号化を適用し、重要度が比較的低い資産には過剰な管理コストをかけないなど、合理的な管理体制の構築が実現します。結果として、過度な管理作業の削減、業務効率の向上に寄与する体制が構築されます。

また、情報資産および管理ルールが明確化されるため、担当者変更時の引き継ぎ、監査対応の円滑化にも効果的です。部署間の認識齟齬の防止、管理方法の標準化にも寄与するため、企業・組織全体の運用効率が高まります。

入札・取引条件を満たすための体制整備

ISMS認証の取得は、公共工事入札・大手企業との取引に必要な要件を満たす手段として、企業・組織のビジネス機会の創出につながるメリットが見込まれます。

多くの企業が、情報セキュリティリスクを適切に管理できる取引先を求めており、ISMS認証取得はその証明として広く認知されている手段です。とくに、政府系機関、金融、IT、人材業界では、入札参加・取引要件としてISMS認証が求められる状況が増えています。

ISMS認証を取得しておけば、事業機会の拡大につながるほか、管理体制を対外的に明示する手段となるため、顧客からの信頼確保にも寄与します。取引先監査の対応負担が軽減される場合もあり、営業活動の効率化にも効果的です。信頼性の高い情報管理体制の構築により、取引上のリスク低減、ならびに企業価値の向上を図る手段となります。

社員のセキュリティ意識向上

ISMS認証取得プロセスでは、情報セキュリティ教育および訓練の実施が必須であるため、社員一人ひとりのリテラシー向上が期待できます。教育内容には、情報資産の取り扱いルール、パスワード管理、標的型攻撃対策、インシデント報告手順などが含まれるため、従業員の行動基準の明確化に有効です。

教育・訓練の継続的な実施により、セキュリティ事故をまねくヒューマンエラーの抑止にも寄与します。また、全社的に統一されたルールが運用されるため、部門間での認識差が減少し、企業・組織全体の管理レベルが底上げされます。内部監査を通じて改善点が把握されるため、教育内容の見直しと改善も容易です。結果として、従業員が自律的に情報セキュリティを意識する文化が醸成され、企業・組織全体のセキュリティ成熟度向上に対する好影響が見込まれます。

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ISMS認証を取得している企業の傾向とは?

ISMS認証を取得している企業・組織には、個人情報・機密データを多く扱う業種の傾向があります。近年では非IT分野にも、取得企業・組織が拡大している状況です。以下では、ISMS認証の取得が多い業種、ならびに取得に適したその他の業種について紹介、解説します。

ISMS認証の取得が多い業種

ISMS認証の取得が特に多いのは、IT・情報通信、クラウドサービス事業者、データセンター、BPO企業など、個人情報や機密情報を大量に扱う業種です。また、金融機関、保険、コンサルティング、公共系システムを扱うSIerなど、高度な情報セキュリティ管理が求められる企業でも認証取得が一般化しています。取引先・委託先からセキュリティ水準を証明するよう求められる場合が多く、認証取得を信頼確保の手段の一つとして活用しています。

ISMS認証の取得に適したその他の業種

近年では、製造、物流、不動産、教育、医療・福祉など、従来IT色が薄いとされてきた業種でも、ISMS認証の取得が広がっています。

これらの業種では、顧客データ、従業員情報、研究開発データ、業務委託先情報などの取り扱いが増加しており、情報漏えいリスクへの対策強化が求められるためです。とくに、DX推進・クラウド利用の拡大に伴い、情報資産の管理基準を整備する目的でISMSを導入する企業・組織が増加しています。

総括

本記事では、ISMS認証の取得企業・組織の検索・確認方法、認証取得のメリット、取得している企業・組織の業種の傾向について解説しました。

ISMS認証は、情報セキュリティ強化と信頼性向上の同時実現を可能とする有効な手段です。自社・自組織の業種における取得状況を含め、自身を取り巻く事業環境や必要性に合わせた導入検討をお勧めします。認証取得のみならず、効果的なリスク対策を含め企業・組織価値の向上へ向けた取り組みの推進が肝要です。

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