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ISMS教育を効果的に実施する方法とは?目的や手順・頻度について解説

ISMS教育とは、企業・組織における情報資産を保護するため、従業員に必要な知識と行動規範を体系的に周知する取り組みです。ISMSは、情報セキュリティマネジメントシステムを指す言葉で、「Information Security Management System」の頭文字を取って、ISMSと呼ばれています。

近年は、ランサムウェアによる被害が増えていますが、相変わらず人的要因によるものも多く、毎年IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表する“情報セキュリティ10大脅威 2025”でも4位に”内部不正による情報漏洩等“、9位に”ビジネスメール詐欺“、10位に”不注意による情報漏洩等“がランクインする等、ISMS教育の重要性は一層高まっています。

本記事では、ISMS教育の目的をはじめ、部門・従事先別に求められる知識・技能、教育実施の手順や適切なタイミングについて整理しました。情報セキュリティマネジメントの有効性を高めるための基礎的指針としてご活用ください。

ISMS教育を実施する目的とは?

ISMS教育を実施する目的とは、従業員の情報セキュリティリスクに対する正しい理解を深め、規程に基づく適切な行動・業務遂行の推進により、事故および情報漏えいを未然防止することです。以下では、従業員の意識向上とリスク管理の観点から、ISMS教育を実施する具体的な目的、および重要性について解説します。

従業員の情報セキュリティ意識向上

ISMS教育を実施する目的の一つは、従業員一人ひとりに情報セキュリティの重要性を正しく認識させ、適切な行動を定着させる点にあります。情報セキュリティ事故の多くは、規程・ルールなどのシステムの不備ではなく、人の思い込み、知識不足による判断ミスが起因する場合が多いためです。

ISMS教育を通じて、情報資産の価値、遵守すべき社内規程、業務に内在するリスクを体系的に理解させ、従業員の意識向上を図ります。これにより、従業員の判断基準が明確化され、企業・組織全体として、情報セキュリティ水準の維持・向上が促進されます。

事故やインシデントの未然防止

ISMS教育は、情報セキュリティ事故、インシデントの発生を未然に防止するための基盤的な取り組みとして実施する目的もあります。標的型攻撃、内部不正、情報の誤送信といった問題は、日々の仕事の中に隠れており、つねに情報セキュリティリスクと隣り合わせの状態です。

ISMS教育により、具体的な脅威、想定される被害、発生要因を従業員に浸透させれば、従業員は自ら危険な行為を回避できるようになります。さらに、異常を察知した際の報告手順、初動対応なども周知しておけば、被害の拡大を抑制し、迅速かつ的確な企業・組織対応が可能となります。

【部門・従事先別】ISMS教育で求められる知識と技能

ISMS教育で求められる知識と技能は、担当部門や従事先によって差異があります。以下では、所属部門・従事先別で、従業員が求められるISMS教育における知識と技能について解説します。

全従業員

全従業員を対象としたISMS教育では、情報セキュリティを企業・組織全体で維持・向上させるための基礎的な概念と、行動規範の知識習得と理解が求められます。具体的には、情報資産の重要性、社内規程・業務ルールの概要と目的、さらには日常業務に潜在する情報セキュリティリスクに関する知識の定着が不可欠です。

また、情報セキュリティの方針や目的・目標を共有し、各自の業務が企業・組織全体の情報セキュリティに対して、どのように寄与しているかを体系的に理解してもらう必要があります。企業・組織に所属する一員としての自覚を促し、個人の判断に依存した対応を防止すれば、一貫性のあるリスク回避行動が促進されます。全従業員への教育は、情報セキュリティ管理体制の基盤を形成する重要な取り組みです。

関連記事:情報セキュリティ目的とは?基本方針の具体例を解説

ISMSの適用範囲に該当する従業員

情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の適用範囲に該当する従業員に対しては、全従業員向け教育に加え、適用範囲特有の管理要求および業務上の責任を理解してもらう必要があります。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の適用範囲とは、ISMSを適用する部門および業務、資産、技術など、保護・管理する対象を指します。

ISMS教育を通じて、自部門・自業務が情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)のどの範囲に含まれているのかを正確に把握させれば、管理対象となる情報資産の取り扱い、情報リスクに対する備えの意識が高まります。また、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の適用範囲内で遵守すべき手順、および管理策を具体的に知識として定着させられるため、規程逸脱・誤運用の防止にも効果的です。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の適用範囲に対する該当従業員の理解は、ISMS運用の実効性を左右する要素であるため、継続的な教育と周知による知識の定着が求められます。

関連記事:ISMS適用範囲の決め方とは?|審査で問われるポイントと実務上の留意点を解説

情報セキュリティ部門に従事する担当者

情報セキュリティ部門に従事する担当者には、企業・組織全体の情報セキュリティ管理を実務面で支えるための専門的な知識と技能が求められます。とくに、情報セキュリティの基本概念である機密性・完全性・可用性の三要素を正しく理解し、各管理策において、どのように反映されているかを把握する必要があります。

また、規程の策定・改訂、運用状況の確認、インシデント対応支援など、実務に直結する対応力も必要です。理論と実務を結び付けたISMS教育により、情報セキュリティ部門に従事する担当者には、企業・組織の情報セキュリティ水準を安定的に維持する重要な役割が期待されます。

関連記事:情報セキュリティの3要素(CIA)とは?|定義・必要性・対策の具体例について

情報セキュリティ責任者・技術担当者

情報セキュリティ責任者および技術担当者には、経営視点とITに関する技術視点の双方から情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を統括する能力が求められます。とくに、情報セキュリティリスクアセスメントに関する知識と技能、適切な対策を採り入れる実践力は不可欠です。

情報セキュリティリスクアセスメントとは、企業・組織が保有する情報資産に潜むセキュリティ上の脅威と脆弱性を特定・分析・評価し、影響度で的確に優先順位つけて、対応・対策の効率化と効果の最大化を図るプロセスです。

情報セキュリティ責任者・技術担当者は、企業・組織が直面するリスクを特定・分析し、適切な管理策の選定・実装により、リスクを許容可能な水準に抑制する役割を担います。加えて、トップマネジメントおよび従業員に対して、採用した管理策に関するリスク対応の妥当性を説明する能力も求められます。

関連記事:情報セキュリティリスクアセスメントとは?策定手順と対策・評価プロセス

内部監査員

内部監査員に対するISMS教育では、規格要求事項および自社・自組織における、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)運用状況を客観的評価に必要な知識と技能の習得が求められます。具体的には、内部監査の目的を理解したうえでの実施手順の把握です。また、監査時に確認すべきチェックポイントに対する理解も求められます。

内部監査員にこのような知識と技能が備わっていれば、形式的な確認にとどまらない実務に則した有効な監査が可能となります。加えて、内部監査員には、被監査部門との適切なコミュニケーション能力も必要です。内部監査における指摘事項を改善につなげるためには、事実に基づいた客観的視点での評価が求められます。ISO27001に代表される、国際規格に適合する情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)を構築・運用する場合、とくに重要な観点です。

関連記事:【チェックリスト付き】ISMSの内部監査とは?目的・やり方と質問例を紹介

外部委託先・パートナー企業の担当者

外部委託先・パートナー企業の担当者に対してISMS教育を実施する場合、直接的な指導のみならず、契約関係に基づく情報セキュリティ要求事項として明確に定義する必要があります。

業務委託、システム開発、保守作業などを外部委託先・パートナー企業に依頼する場合、自社・自組織の情報資産が外部に共有されます。契約時にセキュリティ要件を明示し、遵守事項として契約内容に組み込み、外部委託先・パートナー企業にも遵守を求める形です。これにより、委託先起因の情報漏えい・事故などにつながる情報セキュリティリスクの低減を実現させ、企業・組織外との連携においても、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実効性を維持します。

ISMS教育の実施手順・流れ

ISMS教育は、以下の手順・流れで実施する方法が一般的です。

  1. 教育対象者と学習内容の整理
  2. 教育計画・スケジュールの策定
  3. 教材・研修コンテンツの準備
  4. ISMS教育の実施(研修・eラーニング・現場指導)
  5. 理解度評価・受講記録の保存・改善

以下では、ISMS教育の実施手順ごとに、具体的な教育の進め方について解説します。

1. 教育対象者と学習内容の整理

ISMS教育では、まず「誰に・何を学ばせるか」を明確にします。全従業員向けには、情報セキュリティの基本ルール・インシデント時の対応など共通知識を、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)適用範囲の従業員には自部門のリスク・業務手順に即した内容を設定します。さらに、情報セキュリティの管理者・担当者には、情報セキュリティリスクアセスメントおよび管理策の理解など専門的な内容をカリキュラムとして整理します。対象者の役割・責任に応じて教育内容を分けることが、ISMS教育の実効性を確保する際の要点です。対象者別に学習内容を整理し、形骸化しない実務に則したISMS教育の実施が求められます。

2. 教育計画・スケジュールの策定

教育内容が整理できたら、年間の教育計画と実施スケジュールを策定します。新入社員教育、定期教育、異動・役割変更時の教育などを区分し、いつ・どの形式で実施するかを明確にします。

とくに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001では、従業員に必要な知識・技能についての基準を設定、評価したうえで、ISMS教育の「計画的な実施」が求められています。そのため、認証取得・維持を目的としている場合は、年度初めに計画を立て、内部監査・マネジメントレビューの時期について考慮が必要です。無理のないスケジュール設計を行い、継続的にISMS教育を実施する必要があります。

3. 教材・研修コンテンツの準備

教育計画・スケジュールに基づいて、教材・研修コンテンツを準備します。社内規程、情報セキュリティ方針、過去のインシデント事例などを活用すると、現場に即した教育カリキュラムとなります。

また、eラーニングを活用すれば、理解度テスト、受講履歴の管理も容易です。教材・研修コンテンツの準備では、業務内容および部門特性に合わせた事例を盛り込み、理解促進につながる教育の実施が不可欠です。単なる知識の説明に終わらせず、「自分の業務とどう関係するか」を意識した構成にする必要があります。

4. ISMS教育の実施(研修・eラーニング・現場指導)

準備した教材を用いて、計画どおりISMS教育を実施します。集合研修は意識付けに有効で、eラーニングは全社展開や定期教育に適しています。

また、日常業務の中での現場指導やOJTも重要な教育手段です。教育手法ごとの特性を理解し、目的に応じて使い分けることが重要です。形式に偏らず、対象者や内容に応じて手法を使い分け、理解度と実践力を高める必要があります。

5. 理解度評価・受講記録の保存・改善

教育実施後は、理解度テストやアンケートなどで効果を確認します。受講記録や評価結果は、ISO27001の要求事項に基づき適切に保存する必要があります。また、内部監査・インシデント発生状況を振り返り、教育内容および教育方法の見直しも必要です。

加えて、教育の実施結果を次年度計画へ反映させる視点も求められます。評価と改善の繰り返しにより、ISMS教育は単なる義務ではなく、企業・組織の情報セキュリティレベル向上に寄与する仕組みとして機能します。

ISMS教育の適切な実施タイミング・頻度は?

ISMS教育の適切な実施タイミング・頻度は、「業務開始前」「継続教育」「随時教育」の3段階です。以下では、ISMS教育の適切な実施タイミング・頻度について、根拠とともに解説します。

入社・異動・委託開始時

入社時や部署異動時、外部委託先の業務開始時は、ISMS教育を実施する最も重要なタイミングです。これらの場面では、情報資産の取り扱いルールを十分に理解しないまま業務に関与するリスクが高まります。特に異動時は、アクセス権限や扱う情報の種類が変わることが多く、従来の知識だけでは不十分です。また、委託先についても、自社・自組織と同等の情報セキュリティ意識を持ってもらう必要があります。初期段階で情報セキュリティ方針、遵守事項、インシデント発生時の対応・報告手順などを周知することで、ヒューマンエラーやルール違反を未然に防ぐことができます。

継続的な周知に最適な実施頻度

ISMS教育は一度きりではなく、年1回以上の定期的な実施が推奨されます。業務に慣れるにつれてルールの意識が薄れ、自己流の運用が広がる可能性があるためです。また、IT環境・業務フローは日々変化しており、過去の知識が現状に合わなくなるケースもあります。

年次教育では、基本ルールの再確認に加え、最近のインシデント事例、注意喚起を盛り込めば、形骸化を抑止できます。eラーニングを活用すれば、業務負担を抑えながら全従業員に均一な教育を実施でき、受講管理の面でも有効です。

インシデント発生時、他社のセキュリティ事故、新たな脅威の発生、法令改正時

情報セキュリティインシデントが発生した場合、他社で発生したセキュリティ事故、新たなウィルスや手口等脅威の発生、関連法令・ガイドラインが改正された際は、速やかにISMS教育を行うことが重要です。実際のインシデントや他社で発生した事故を題材にした教育は、抽象的な説明よりも理解度が高まり、従業員の当事者意識を強く喚起します。また、新たなウィルスや手口等の脅威が発生した場合は、それらに関する情報や対策は早期に関係者で共有することが望ましいです。

また、法令改正への対応が遅れると、コンプライアンス違反、社会的信用の低下につながる恐れがあります。改正によって、商ビジネスの制度、流れなどの変更点がある場合は整理し、業務にどのような影響があるのかを明確化し、ISMS教育を通じた従業員への意識付けが不可欠です。必要に応じて臨時教育を実施し、最新の制度・法令に関する知識を迅速かつ確実に共有する必要があります。

総括

本記事では、ISMS教育の実施目的や、従業員が求められる知識・技能、実際にISMS教育を行う際の手順について解説しました。

ISMS教育は、情報セキュリティマネジメントを有効に機能させるための重要な要素です。目的・対象に応じた教育内容を計画的に実施し、理解度の評価と継続的な改善を行えば、規程遵守の定着とリスク低減が図られます。企業・組織全体でのISMS教育の的確な実施が、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の実効性向上を実現します。

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