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ISO認証取り消しの原因を解説|企業が受ける影響や対策とは?

ISO認証は、企業が国際的な品質基準を満たしていることを示す認証制度です。
ISOは非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。本部はスイス・ジュネーブにあり、活動目的は国際的に通用する規格を制定することであり、この規格をISO規格といいます。ISO規格は、国同士の取引を円滑にするために、製品やサービスが“国が相互に、一定の水準のものを提供できるようにする”という国際的な基準であり、制定や改訂は日本を含む160以上の参加国の投票によって決まります。

例えば、国際大会で使用する国コード、クレジットカードのサイズ、非常口のマーク等があります。ISO規格には大きく、製品規格とマネジメントシステム規格があり、多くの企業が認証しているISO9001、ISO14001、ISO/IEC27001等はマネジメントシステム規格に分類されます。これらの規格を認証している企業は“良い品質の製品を提供する”“環境に配慮した取り組み”“情報セキュリティに配慮した取り組み”を行っているとなります。

そして、これらを認証するためには第三者機関、俗に審査機関といわれる組織の審査を受ける必要があります。審査は認証取得時の審査に加え、定期審査(サーベイランス審査)や再認証審査・更新審査を通じて、要求事項に適合しているか判断されます。しかし、認証取得できても、状況次第で取り消される場合があるのも実情です。

ISO認証の取り消しは、企業の信頼性を左右する重要な要素であり、取り消しを回避するためには事前に原因を把握した上で、対策を講じる必要があります。また、認証取り消しを回避できても、一時停止措置が取られる場合があることも把握しておくべきでしょう。

本記事では、ISO認証の一時停止・取り消し措置が取られる理由や、企業に与える影響に加え、ISO認証の一時停止・取り消しを回避するための対策方法についても解説します。

ISO認証の取り消し・一時停止について解説

ISOの認証要求事項を満たしていない、あるいは重大な違反があった場合、ISO認証の取り消しや一時停止といった措置が取られます。

まずは、ISO認証の取り消し・一時停止、それぞれの具体的な措置と認証を返上する場合の違いを紹介します。

取り消し

ISO認証の取り消しとは、ISO認証を維持する要求事項に満たない、もしくは重大な違反があったと判断された場合に、認証自体を取り下げられる措置です。取り消し後は認証を取得している旨を公表できません。

重大な違反があったと判断されたり、なんらかの不祥事が発生したりした場合、審査機関では定期審査(サーベイランス審査)とは別に、特別審査を実施することがあります。当該企業・組織への特別審査によって、認証の可否が判断される仕組みです。

ISO認証の取り消し措置を受けた場合、原則として1年間同審査機関の審査を受けることは不可能です。ただし、認証取り消し事由が解消されれば、1年以内でも再度認証申請が可能な場合もあります。

一時停止

ISO認証の要求事項を一時的に満たせていない場合や、監査で指摘された要求事項の不適合を指定期間内に是正できない場合、ISO認証の一時停止措置が講じられます。

一時停止を解消するためには、指摘された要求事項の不適合を解消し、さらに適合性が再確認される必要があります。一時停止措置が解消されれば、再度公表できますが、
取り消し措置と同様に、一時停止期間中は認証を取得している旨を公表できません。

ISO認証返上との違い

ISO認証の返上とは、認証を取得している企業や組織が自ら認証機関へ登録抹消を申し出ることを指します。取り消し・一時停止措置とは異なり、ISO認証の返上は企業・組織側から申告するものです。

ISO認証の維持にかかる費用や、内部監査の負担を軽減する目的で、返上する企業もあります。

ISO認証は、一度認証を取得していても取り消しや一時停止措置により、利用不可となる場合があります。維持し続けるためには、認証の取り消しや一時停止措置にいたる原因や基準の把握と対策が必要不可欠です。

ISO認証の取り消し・一時停止措置にいたる原因

ISO認証の取り消し・一時停止措置が講じられる原因を解説します。基本的に、ISO認証の取り消し・一時停止措置が取られるのは、以下の項目に該当していることが原因です。

  • 認証ロゴ等の使用ルール違反
  • エビデンスの捏造
  • 重大インシデント、苦情・クレームの隠蔽
  • 審査への非協力

認証ロゴ等の使用ルール違反は、認証ロゴや認証証明書の利用時に、誤解を生みかねない方法で使用した場合に指摘されます。認証を得るためのエビデンスを事実とは異なる内容に捏造するのも禁止行為です。

そのほか、重大インシデントの発生や顧客からの苦情・クレームの隠蔽が発覚した場合、あるいは内部告発が発生した場合も、審査機関により措置が取られます。審査機関の審査に、非協力だと判断された場合も同様です。

いずれの場合も審査機関の審査員によって、まず是正・改善が要求されます。取り消し・一時停止措置の対象となるのは、是正・改善に従わない場合や、是正・改善施策が十分でないと判断された企業・組織です。

ISO認証の維持を図るには、取り消し・一時停止措置と判断される事象の発生を抑止し、要求事項に適合し続ける必要があります。

ISO認証取り消しによる企業への影響

ISO認証を取得しているか否かが顧客との取引条件に含まれている場合、ISO認証が取り消されることによって、取引が中止になる可能性があります。また、自治体の入札要件にISO認証の取得が含まれている場合は、入札への参加資格も失います。

さらに、マスメディアなどでISO認証の取り消しが公表された場合、社会的信用の毀損につながる恐れもあります。事業内容によっては、大幅な収益源にもつながりかねません。
なお、一度ISO認証を取り消されると、再度新規で認証を取り直す必要があります。その結果業務上の負担が増大する点も十分心得ておきましょう。

ISO認証の取り消し・一時停止措置を回避するための対策

ISO認証の取り消し・一時停止措置を回避するためには、認証を維持するための対策が必要です。以下の3項目は非常に重要な項目となります。

  • 継続的な改善維持に努める
  • 是正処置や予防処置を徹底する
  • 従業員への教育訓練を実施する

それぞれ、項目ごとの留意点や、これらがISO認証の取り消し・一時停止措置の回避に対して、どのように寄与するのかを解説します。

継続的な改善維持に努める

ISO認証の取り消し・一時停止措置を回避するには、継続的な改善維持に努める必要があります。単に目標を定めるだけでなく、内部監査で指摘された要求事項を適切に反映しつねにより高い水準を目指して改善を重ねていくことが肝要です。

また、改善施策の策定にとどまらず、全従業員に対して施策の趣旨および内容を的確に周知し、実施状況を定期的に点検・評価する体制を構築することも押さえておく必要があります。

是正処置や予防処置を徹底する

ISO認証の取り消しや一時停止措置を回避するためには、是正処置および予防処置を適切かつ確実に実施する必要があります。定期的に実施される認証機関によるサーベイランス審査に先立ち、社内における管理体制を整備し、自主的な点検体制を確立することが不可欠です。

その一環として有効なのが「内部監査」となります。内部監査体制を構築することにより、是正処置および予防処置の迅速な実施が可能となり、早期段階での不適合の発見と是正が実現可能です。また、組織全体の管理体制や業務プロセスを精査し、改善を図ることも効果的でしょう。

こうした取り組みを通じて、ISOの要求事項への対応力を継続的に高めていくことが求められます。不適合を早期に抽出し、その原因を特定・除去する体制を社内に徹底することが肝要です。

従業員への教育訓練を実施する

ISO認証の取り消しや一時停止措置を回避するためには、従業員への教育訓練を計画的かつ継続的に実施することが欠かせません。

たとえ経営層が改善の方向性を明示していても、従業員がその内容を理解していなければ、取り組みが組織全体に浸透せず、認証の維持が困難となる可能性があります。

そのため、教育訓練においては、実施の頻度や内容の妥当性に加えて、効果の定期的な検証も行い、実効性を担保する必要があります。

ISO要求事項への適合を継続的に維持するためには、全社的な取り組みが必要不可欠であり、その基盤となる人材の育成は非常に重要な位置づけにあります。

総括

ISO認証が取り消されると、企業の信用や取引先との関係、さらには事業継続そのものに大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、認証の取り消しや一時停止にいたる要因を正確に把握し、それらを未然に防ぐための管理策を講じる必要があります。

認証取得後は、単なる形式的な維持にとどまらず、要求事項への適合性を見直しながら、日常の業務活動を通じて継続的な改善に努める姿勢が必要です。とくに、内部監査やサーベイランス審査において指摘された事項については、速やかに是正処置を講じ、恒久的な再発防止策を実施することが望まれます。

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