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ISO審査の流れを解説|認証取得までの流れや必要な準備とは?

ISO認証を取得するには、審査機関による審査が不可欠です。ISO審査は、企業や組織が国際規格の要求事項に適合しているかどうかを評価し、認証の可否を判断するプロセスであり、通常いくつかの段階に分けて実施されます。

それ故に円滑に認証を取得するには、審査全体の流れを事前に把握し、各段階に応じた準備を進める必要があります。

本記事では、ISO審査の概要に加え、認証取得に向けた準備のポイントや審査当日の進行手順、必要となる書類の一覧までを包括的に解説します。ISO認証取得を検討する際の参考資料となれば幸いです。

ISO認証における「審査」を解説

ISO認証を取得するには、審査機関による審査を受け、規格の要求事項に適合していることを証明する必要があります。適合性が確認されれば、国際的な信頼性を備えた運営体制を有していると評価されます。

以下では、ISO認証制度の基本的な仕組みと、審査における代表的な区分について解説します。

ISO認証の仕組み

ISO認証とは、国際標準化機構(ISO)が策定したマネジメントシステムに関する国際規格に適合していることを、第三者機関が認証する制度です。International Organization for Standardizationの頭文字を取って「ISO」と呼ばれています。

この認証制度は、国際取引の円滑化を目的に設けられたものです。認証を取得することによって、組織が国際的に通用する基準に適合していることを対外的に示せます。

ISO認証の取得は、標準化された要求事項を満たしていることの証明となり、日本国内にとどまらず、海外企業との取引においても信頼性向上に寄与します。結果として、企業のブランド価値や市場競争力の強化にも好影響を与える仕組みといえます。

ISO審査の種類

ISO審査は、以下の3種類あります。

  • 登録審査
  • 定期審査(サーベイランス審査)
  • 再認証審査・更新審査

登録審査は初回のISO認証取得時に実施されるものです。組織が該当するISO規格の要求事項に適合しているかどうかを審査機関が評価します。登録審査で要求事項に適合できていると評価されれば、認証取得企業として登録され、正式に公表することが可能です。

認証後は、マネジメントシステムの維持・運用状況を確認するため、年1回以上、定期審査が実施されます。加えて、初回認証から3年を経過すると、システム全体の有効性や継続的改善の状況を再評価する再認証審査・更新審査が行われます。

このほか、重大な事故や不正、内部告発等が発生した際には、通常のスケジュールとは別に臨時審査(特別審査)が実施されることもあります。こうした状況に備えるためには、内部監査を通じて日常的に管理体制を点検・強化しておくことが求められます。

ISO認証取得に向けた準備から審査までの一連の流れ

以下では、ISO認証取得の準備~審査までの流れを解説します。

1.事前準備

ISO認証の取得に先立ち、まずは取得対象となる規格の選定を行う必要があります。ISOが発行する規格は2万件を超えており、その中から自社に最適なものを見極めるには、一定の時間と検討が必要です。

代表的なISO規格としては、以下のようなマネジメントシステム規格が挙げられます。

  • ISO9001(品質マネジメントシステム)
  • ISO/IEC27001(情報セキュリティマネジメントシステム)
  • ISO22000(食品安全マネジメントシステム)
  • ISO14001(環境マネジメントシステム)
  • ISO30414(人材マネジメントシステム)
  • ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)

これらはあくまで一部に過ぎず、業種や経営課題、取引要件等に応じて、適用すべき規格を選定すると良いでしょう。目的と効果を明確にしたうえで、自社にとって真に価値ある認証の取得を検討する必要があります。

2.マネジメントシステムの構築・運用

取得するISO認証の規格を選定した後は、組織内において、当該規格の要求事項に適合したマネジメントシステムの構築および運用に着手します。

構築および運用の主な手順は、以下のとおりです。

  1. 企業・組織体制の現状把握と方針・目標の設定
  2. 認証に向けての体制構築(プロジェクトチーム結成等)
  3. (必要な場合)コンサルタントの選定
  4. 審査機関の選定
  5. ISO規格の要求事項に則した組織が必要と判断した文書の構築・作成
  6. ISO認証取得・運用に必要な文書・帳票・データの管理方法を整備
  7. 運用開始・運用記録の作成
  8. 内部監査体制の構築・実施
  9. トップマネジメントによる評価(マネジメントレビュー)

なお、マネジメントシステムは構築しただけでは認証の取得には至りません。要求事項に適合していることに加え、システムが日常業務の中で確実に機能し、かつ継続的に改善されていることを、記録や運用の実績によって客観的に示す必要があります。

したがって、文書や帳票の整備にとどまらず、業務への定着と従業員の理解浸透、運用状況の記録・分析、改善サイクルの確立といった総合的な取り組みが不可欠です。これらを適切に推進することで、ISO認証の取得とその維持が実現可能となります。

3.審査実施

ISO認証を取得するにあたって、認証機関による登録審査が実施されます。この審査では、組織がISO規格の要求事項に適合しているかどうかに加え、マネジメントシステムが実際に企業・組織の運営に寄与しているかが確認されます。

登録審査は、第一段階審査と第二段階審査の二段階に分かれており、それぞれの目的と内容に明確な違いがあります。第一段階審査では、審査員が企業に訪問し、マネジメントシステムの構築状況、規格が求める文書類の整備状況やシステムの導入準備が評価対象となり、適切に構築されているかが確認されます。

これに続く第二段階審査では、審査員が現地にて実地確認を行い、マネジメントシステムが実務に即して運用されているか、また有効に機能しているかが評価されます。この際、審査員から各部門の責任者や従業員に対して質問が行われることが一般的です。円滑な審査対応のため、事前に想定される質問内容や回答方針を整理しておく必要があります。

内部リンク:ISO審査の質問内容を具体例を交えて紹介|想定質問の作成方法や理想の対応例とは?

4.認証取得

すべての審査を通過した場合、認証登録されます。認証登録が完了すれば、認証機関が定める認証マークの使用や、対外的に認証取得済みの企業・組織として正式に公表することが可能です。

なお、認証取得後も、定期審査や更新審査を受け、マネジメントシステムの継続的な有効性が維持されていることを証明し続ける必要があります。審査の都度、システムの見直しや改善が求められるため、内部体制の継続的な運用と記録の整備が必要不可欠です。

ISO審査を円滑に進めるには、全体の流れを事前に把握することが欠かせません。これにより、無理のないスケジュール管理が可能となり、認証取得までの準備を計画的に進められます。

単にマネジメントシステムを構築するだけではなく、実効性のある運用および維持管理手法を併せて検討しておくことが、認証を維持するための鍵です。

ISO審査当日の流れ

以下では、一般的なISO審査当日の流れを解説します。

1.オープニングミーティング

ISO審査の当日は、最初に「オープニングミーティング」が実施されます。このミーティングには、審査員に加えて、経営者層やISO推進責任者、関係部門の担当者が出席するのが一般的です。

ミーティングの目的は、審査に先立って双方の認識を統一し、誤解や齟齬を未然に防ぐことにあります。具体的には、以下のような項目について確認が行われます。

  • 審査目的・適用されるISO規格の種類確認
  • 審査範囲(対象部門・対象業務)および審査日程の確認
  • 守秘義務の宣誓
  • 審査の進行方法(インタビュー形式・現地確認・記録照合の進め方など)についての説明
  • 関係者・各部門の対応スケジュールの確認
  • 不適合が発見された場合の対応方法・是正措置について
  • 安全衛生・セキュリティに関する留意事項(施設入退室、写真撮影の可否など)の確認

また、審査員の紹介や、連絡体制の確認などもこの場で行われます。審査員は中立性・公平性を担保する立場であることから、オープニングミーティングではその姿勢が明確に示されるとともに、組織側も協力的な姿勢を表す必要があります。

この初期段階で審査の全体像を関係者間で共有しておくことにより、スムーズな審査の実施と、不要な混乱の回避につながります。オープニングミーティングは、審査の円滑な運営に向けた重要な出発点と位置づけられています。

2.トップインタビュー

トップインタビューは、審査員が経営層に対して直接ヒアリングを行う審査工程です。マネジメントシステムの根幹に関わる方針や、経営者の関与状況を確認することを目的としています。主な対象は、経営方針の策定および、資源配分に責任を持つ立場の代表取締役や事業責任者などです。

このインタビューでは、まず企業や組織の概要、事業内容、経営戦略、主な顧客層および市場環境といった基本的な情報に加え、ISO認証の取得目的やその背景について説明が求められます。さらに、外部・内部環境の分析に基づいた経営課題の認識や、利害関係者に対する対応方針など、リーダーシップに関する規格要求事項への理解と実践状況も確認されます。

また、マネジメントレビューの実施状況も重要な評価対象項目です。審査員は、経営者がレビューを通じてマネジメントシステムの有効性をどのように把握し、改善や見直しに活かしているか、また継続的改善の意思決定にどの程度関与しているか、具体的な説明を求めます。

この工程は、ISO規格において重視されている「トップマネジメントの責任」および「リーダーシップとコミットメント」に直接関わるため、適切な準備と経営層自身の理解が必要不可欠です。事前に想定される質問事項を整理し、明確かつ実態に即した説明ができるよう準備しておくことが望まれます。

3.現場視察(サイトツアー)

ISO審査当日には、審査員による現場視察(サイトツアー)が行われます。これは、マネジメントシステムが文書上だけでなく、実際の業務現場においても有効に機能しているかを確認する重要な工程です。

現場視察では、作業手順がマニュアルに従って実施されているか、記録の作成や保管が適切に行われているか、設備や作業環境が規定に沿って管理されているかなどが確認されます。また、現場担当者へのヒアリングを通じて、業務内容の理解度やルールの定着状況、教育訓練の履歴なども確認され、評価の対象となります。

現場視察はマネジメントシステムの実効性が問われる工程であるため、形式的な準備にとどまらず、実務との整合性と要求事項に適合したシステムの日常的な運用が求められます。

4.ISO責任者・部署インタビュー

ISO審査においては、審査員によるISO責任者および各部門へのインタビューが実施されます。マネジメントシステムに関連する最新の文書や記録が確認されるとともに、マネジメントレビューの実施状況や結果、組織が認識している外部・内部の課題について説明が求められる工程です。

また、顧客・従業員・株主など、利害関係者のニーズや期待をどのように把握し、業務や方針に反映しているかも評価対象となります。審査員は、部門ごとの業務運用がISO規格の要求事項と整合しているかを確認するため、関係者の認識や実践状況を多角的にヒアリングします。

準備段階では、想定される質問に対する回答方針の整理と、根拠となる文書類の確認が不可欠です。

5.審査のまとめ

現地審査の全工程が終了すると、審査員によってISO審査の総括が行われます。審査中に確認された事項や、各工程での評価内容が整理され、全体的な審査結果としてまとめられる段階です。

審査の中で不適合事項や観察事項が発見された場合には、その詳細や是正の必要性についても言及され、組織側に対して改善の方向性が提示されることがあります。あわせて、認証機関が作成する正式な審査報告書の草案の準備が開始され、後日の交付に向けた手続きが進められるのもこの工程です。

審査のまとめは、審査全体の客観的な評価と、今後の対応方針を明確にする重要な場面と位置づけられています。

6.クロージングミーティング

審査の全行程が終了した後、審査員と組織関係者によるクロージングミーティングが実施されます。審査員からの総括として、審査全体の所見や評価の要点が説明され、マネジメントシステムがISO規格の要求事項にどの程度適合していたかが口頭で報告される段階です。

あわせて、審査後の認証登録に関する手続きや今後のスケジュール、追加書類の提出要否などについても案内されます。

審査の過程で不適合が確認された場合は、その内容がこの場で明確に指摘され、是正処置の必要性や対応期限が伝えられます。不適合の重大性に応じて、是正報告書の提出や追加審査が求められることもあるため、早期の対応準備が必要です。

なお、ISO審査は規格への適合性を評価するという目的において共通していますが、認証機関ごとに審査の進行手順や重点確認項目に差異があります。したがって、クロージングミーティングの内容や進め方も認証機関によって異なる可能性があるため、事前の確認と柔軟な対応体制の整備が必要です。

ISO審査・認証取得に必要な準備

ISO認証を取得するにあたって、審査機関による登録審査(初回審査)に先立ち、社内の体制整備および関連文書の準備が必要です。

認証取得後も定期審査や再認証審査・更新審査が実施されるため、各審査対象期間に応じた記録・報告書類を適切に保管・管理し、審査時に提示できる状態を維持しておく必要があります。

具体的には、以下のような文書です。

  • マネジメントマニュアル
  • 手順書(プロセス文書)
  • 内部監査の実施報告書
  • マネジメントレビューの記録
  • 是正処置・予防処置の記録
  • 業務記録(帳票類)

再認証審査・更新審査では、一般的に過去3年分の文書・記録の提示が求められます。また、定期審査ではその年に該当する1年分の記録が対象となるため、文書を体系的にファイリングし、証跡として管理することが不可欠です。文書管理の精度は、審査の信頼性にも直結するため、日常業務の一環として記録を整備しておくことが求められます。

内部リンク:ISO審査の質問内容を具体例を交えて紹介|想定質問の作成方法や理想の対応例とは?

総括

ISO認証を取得するためには、審査機関による厳格な審査を受け、組織のマネジメントシステムがISO規格の要求事項に適合していることを証明する必要があります。初回の登録審査を通過することが第一のステップですが、認証の有効期間は通常3年間と定められており、その間には年1回以上の定期審査、3年ごとの更新審査への対応も必要です。

定期的に実施される審査に備えるには、マネジメントマニュアルや手順書、内部監査報告書、是正処置記録などの文書を整備し、日常的に管理体制を維持する必要があります。また、審査当日の進行や審査員からの質問内容に関しても、関係部門と連携し、事前に想定問答を準備しておけるとよいでしょう。

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