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ISO27001(ISMS)コンサルタントの必要性を解説|最適なコンサルの選定基準とは

各企業が、企業経営の根幹を揺るがしかねない情報漏洩やサイバー攻撃など情報セキュリティリスクへの対応に迫られている昨今、情報セキュリティリスクへの対策を強化する手段として、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「ISO27001」を取り入れる企業も少なくありません。

一方、ISO27001の取得や運用には専門的な知識が不可欠です。そのため、多くの企業が、ISO27001の認証取得に向けて、ISO27001コンサルタント活用を検討しています。このときもっとも重要なのは、自社の状況にマッチするコンサルタント会社の選定です。

本記事では、ISO27001の認証取得に向けて、コンサルタントへ依頼すべきかを判断する基準から自社に最適なコンサルタント会社の選び方までを解説します。

ISO27001コンサルタントの基本情報

ISO27001コンサルタントとは、ISO27001認証の取得から運用・維持に至るまで、企業・組織を多面的に支援する専門家を指します。主に運用体制の構築や認証取得に向けた支援を行います。

ISO27001(ISMS認証)は、国際標準化機構(ISO)によって策定された情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格を指し、機密性・完全性・可用性の三原則に基づき、組織の情報資産を保護するための管理体制の確立を目的としています。

認証取得にあたっては、第三者機関による厳正な審査を受ける必要があり、これを通じて、自社の情報セキュリティ体制が国際的な基準に適合していることを対外的に示すことが可能となります。特に、初めての認証取得を目指す企業・団体にとっては、専門知識と経験を有するコンサルタントの支援を受けることで、効率的かつ確実な体制整備が可能となり、認証取得後の運用段階においても安定したマネジメントが実現されます。

ISO27001コンサルタントの業務

ISO27001コンサルタントは、体制構築の支援、リスクアセスメントの実施、規定や手順書の整備などをサポートします。さらに、従業員に対する教育訓練の企画・実施、内部監査の指導、ならびに審査機関による認証審査への対応支援も業務として含まれます。

組織にとって情報資産の保護は経営上の重要課題であり、外部からの信頼を得るうえでも情報セキュリティマネジメントシステムの体制構築は不可欠です。これらの施策実効性を高めるために、専門的知見を有するコンサルタントの関与は極めて有効といえます。

ISO27001コンサルタントに求められる資格・スキル

ISO27001コンサルタントとして業務に従事するうえで、特定の資格は必須ではありません。一方でISO27001コンサルタントには、顧客企業ごとの事業特性および実際の運用状況を的確に把握し、それに基づいた体制の構築、関連文書の整備、並びに審査対応を効果的かつ合理的に遂行する能力が求められます。

加えて、情報セキュリティに関する専門的知識のみならず、関連する法令・規制への理解と対応能力、ならびにリスクマネジメントに関する知見も不可欠です。さらに、社内の各関係部門との連携を円滑に進めるための調整力およびコミュニケーション能力も、極めて重要な資質として位置づけられます。

情報セキュリティリスクへの対応ではIT関連の対策が重要であることからIT関連の知識、できればスキルがあるとなお良いと思います。例えば、システムエンジニアとしての経験、情報セキュリティ関連業務の経験、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が認定する資格の有無等が参考になります。

規格の解釈を押しつけるのではなく、組織の実情に即して適切な改善提案を行えるかどうかが、コンサルタントの力量を左右するともいえるでしょう。

ISO27001コンサルタントへの依頼を判断する基準

ISO27001コンサルタントへの依頼については、自社の内部体制およびリソースの状況を踏まえ、慎重に判断する必要があります。中でも、社内において情報セキュリティマネジメントに関する専門的知見や実務経験を有する人材が不足している場合には、外部専門家による支援を受けることで、認証取得に向けた取組を効率的かつ的確に進めることが可能となります。

コンサルタントごとに支援領域や専門分野には差異があるため、依頼に先立ち、自社が求める支援の範囲および目的を明確化する必要があります。そのうえで、適切な支援が受けられる体制を備えた事業者を選定することが、成果に直結するでしょう。
以下においては、ISO27001認証取得に際してコンサルタントへの依頼の是非を判断するための基準、ならびに依頼先選定において留意すべき観点を解説します。

コンサルタントが必要な場合

ISO27001コンサルタントへの依頼が必要なのは、企業・組織内に情報セキュリティマネジメントに関する専門的知見や実務経験を有する人材が不足している場合や、初めてISO認証の取得に取り組む場合です。また、自社内のリソースが限定されており、効率的かつ計画的に認証取得を進める必要がある場合においても、コンサルタントへの支援依頼を検討することが望ましいでしょう。

中でも、小規模な企業・組織で、情報セキュリティマネジメントシステムの体制構築に不安がある場合は、コンサルタントへの依頼が推奨されます。加えて、短期間での認証取得を目指す際や、過去に認証の取得を失敗した企業においても、コンサルタントによる第三者視点での客観的な助言は有益です。

コンサルタントは、ISO27001の要求事項の解釈をはじめ、リスクアセスメントの実施手順、関連文書の整備、さらには内部監査の運用方法に至るまで、現場の実情に即した実務的かつ具体的な支援を提供します。企業または組織において、これらの対応を自力で遂行することが困難である場合には、可能な限り早期の段階でコンサルタントの活用を検討するとよいでしょう。

自社で認証取得が可能な場合

企業や組織単独でのISO27001認証取得が可能な場合であっても、コンサルタントへの依頼可否については慎重な検討が求められます。

規格の要求事項を正確に理解しており、かつそれを運用に落とし込む知識と経験に富んだ人材が社内にいるかが依頼の可否を左右します。リスクアセスメントや内部監査、文書管理など、各プロセスを適切に遂行できる体制が確立されているか、という観点での判断も必要です。

さらに、過去に類似の認証取得に対応した経験がある人材の在籍状況も、単独での認証取得に向けた円滑な対応に影響を与えます。これらの条件をすべて満たす場合は、自社・自組織での単独対応が可能です。

ただし、認証取得後の運用維持や、定期審査(サーベイランス審査)・再認証審査・更新審査への対応を見据えたうえで、検討する必要があります。ISO27001コンサルタントへの依頼は、認証の一時停止や取り消し措置などのリスクを低減する手段としても有効であるためです。

認証取得に向け、何から着手すべきか判断がつかない場合や、認証の維持ならびに関連リスクの回避を図る必要がある場合には、当該状況に応じて、ISO27001コンサルタントへの支援依頼を検討する必要があるでしょう。

ISO27001コンサルタント活用時に見込まれる効果

ISO27001コンサルタント活用時には、以下の効果が見込まれます。

  • ISO27001の構築・運用工数の削減
  • 審査時における指摘事項や不適合項目の低減
  • 文書類の体系的な整備による管理業務の効率性向上

ISO27001認証の取得にはじめて着手する場合、要求事項の正確な理解とその適用方法についてのコンサルタントによる指導は、認証取得の確実性を高めます。

また、第三者の視点による客観的な状況把握が可能となることで、企業・組織単独のチェック体制では見落としがちなリスクや運用上の不備を早期に発見できる点も、大きな効果です。

加えて、専門家の支援を受けながら規格に準拠した文書類も体系的に整備できるため、情報セキュリティマネジメントシステムの運用ルールや管理方法が明文化されます。これにより、担当者間の認識齟齬や属人化が解消され、情報セキュリティに関する業務の効率性が大きく向上します。

コンサルタントの支援により、リスクや不備を早期に把握し適切な対策を講じることができれば、認証審査における指摘事項の発生リスクを低減することが可能です。一方で審査時における指摘事項や不適合項目は、体制の改善や是正処置を講じる機会として捉えられます。より良い情報セキュリティマネジメントシステムの運用や、業務効率の向上につながる機会として歓迎すべき事項ともいえるでしょう。

一方で、不適合事項や指摘事項の改善処置には負担がかかるため、コンサルタントによる指導は是正対応に要する工数およびコスト削減も期待できます。

ISO27001コンサルタントに認証取得を依頼する場合の費用相場

ISO27001認証の取得をコンサルタントに依頼する場合、認証機関に支払う審査費用とは別に、コンサルティング業務に対する依頼料金が発生します。依頼を検討する際には、審査費用とコンサルティング料を明確に区別したうえで、全体の費用感を把握しておく必要があります。

以下では、認証機関に支払う審査費用の相場と、ISO27001コンサルタントに支払うコンサルティング料の相場目安について解説します。

審査費用

ISO27001認証を取得する際、認証機関へ支払う審査費用の目安は、約50万円~100万円です。審査費用は、企業の規模や事業拠点数、業種、従業員の数に加え、審査対象の範囲によって差異があります。

審査費用の内訳は、文書審査にかかる「第一段階審査費」、実地確認を行う「第二段階審査費」にかかる費用です。また、認証登録費用や認証発行手数料、認証維持費用、事務手数料のほか、審査員の交通費や宿泊費、日当などが含まれる場合もあります。

また、認証取得後には、毎年の定期審査(サーベイランス審査)や、3年ごとの更新審査が必要になるため、都度費用が発生します。これらを踏まえ、ISO認証を取得する際は、認証登録時にかかる初期費用だけでなく、長期的な運用コストも考慮した予算計画の立案が不可欠です。

コンサル料金

ISO27001認証の取得および維持にあたり、コンサルタントを活用する場合の費用は、年間約30万円~200万円が目安です。ただし、この金額は一律ではなく、企業の規模や業種、拠点の数、依頼する支援範囲によって大きく異なります。

加えて、コンサルティング会社ごとの提供体制や支援内容、依頼元の準備状況によっても費用は変動します。そのため、事前に複数の事業者から見積を取得し、支援範囲や実績を比較検討する必要があります。

なお、費用の安さだけを基準に依頼先を選定するのは推奨できません。自社の課題や体制に適合し、実効性のある支援を行える事業者を選ぶことが、認証取得の確実性とその後の安定した運用につながります。

ISO27001コンサルタント会社比較時に見るべき項目

ISO27001規格の認証取得やその維持を目的としてコンサルタント会社を選定する際には、適切な支援を受けるために事前の比較検討が欠かせません。なかでも重要となるのが、以下の5つの観点です。

  • 実績が豊富かどうか
  • 企業の規模、特性に応じた文書化を考えているか
  • サポート範囲はどこまであるか
  • 担当者とのコミュニケーションの取りやすさ
  • 料金体系は明確かどうか
  • 自社の業務や課題に対する理解があるか

以下では、各項目における留意点や、比較時の具体的な判断基準について解説します。

実績が豊富かどうか

ISO27001のコンサルタント会社を比較する際、実績の豊富さは、規格に対する理解の深さや、多様な業種・業態への対応力を裏付ける指標です。ただし、依頼先を選定する際には、支援実績の件数だけでなく、実際に対応した企業の業種や規模、拠点数などの確認も必要不可欠です。

加えて、自社と同業種もしくは同規模の企業への支援経験があるかという観点は、実務面での対応力を測るうえで有効な参考材料となります。そのほか、初回認証取得だけでなく、維持・更新や再認証まで対応した実績の有無も確認しておくべき項目です。

さらに、どの認証機関との対応実績があるか、審査時の指摘件数は他社と比較して抑えられているかなども、品質の高い支援を行っている企業かを判断する材料となります。

企業の規模、特性に応じた文書化を考えているか

ISOとは“マニュアルや規程、手順書を作成し、その通りに運用すること”と誤った認識を持つコンサルタントがいます。そもそも、規格は“文書は組織が必要と考えるものを作成しなさい”という考え方です。“マニュアルや規程、手順書通りに…”は完全に誤っているとはいいませんが、まずはマニュアルを作って、規程や手順書、書式を作るという考え方は誤りです。特に、最近認証に取り組む企業は起業して間もない、あるいは企業規模が小さいというところが多数を占めます。このような企業にページ数が多い文書、あるいは数多くの文書は運用開始後、メンテナンスできません。そのコンサルタントの過去の実績から文書化に対する考え方を確認するとよいでしょう。

サポート範囲はどこまであるか

ISO27001コンサルタント会社を比較検討するうえで、重要な選定基準の一つとしてサポート範囲も挙げられます。コンサルタント会社が提供する支援内容には差があり、選定を誤ると必要な対応が不足しかねないことが理由です。

たとえば、規程類やマニュアル、各種帳票の作成支援にとどまる事業者もあれば、内部監査の実施支援や社員向けの教育研修、さらには認証取得後の実務運用までをカバーする事業者もあります。

重要なのは、単なる認証取得に終始せず、取得後も社内で情報セキュリティマネジメントシステムが継続的に機能するよう支援しているかという点です。形だけの認証取得・維持支援ではなく、実効性のある運用に結びつけるためには、企業・組織に対するヒアリング力も求められます。

依頼前には、支援範囲が明文化されているか、企業・組織の実情に即した支援が受けられるかを確認する必要があるでしょう。

担当者とのコミュニケーションの取りやすさ

ISO27001の認証取得には、数カ月から1年程度の期間を要します。認証取得後も体制の維持やブラッシュアップ、定期審査(サーベイランス審査)対応などが続くため、コンサルタントとは中長期的な関係を築くことになります。

それ故に、担当者との円滑な意思疎通は、プロジェクト全体の進行に大きく影響する要素です。担当者とのコミュニケーションの取りやすさを推し量るには、相談しやすい雰囲気か、専門用語を噛み砕いて説明してくれるかなど、寄り添う姿勢を評価すると良いでしょう。

また、円滑な意思疎通が図れるかどうかを判断するうえで、メールや電話等に対する応答の迅速性についても、事前に確認しておくことが重要です。初回の打ち合わせや問い合わせ時における対応状況を通じて、担当者のコミュニケーションに対する姿勢および対応スピードを見極め、コンサルタント会社の選定に適切に反映させる必要があります。

料金体系は明確かどうか

明確な料金体系も、ISO27001コンサルタント会社を比較・選定する際に重要な基準の一つです。コンサルティング費用は、企業規模や支援内容によって大きく異なります。依頼金額の総額だけでなく、その内訳が明示されているかを確認することが肝要です。

たとえば、文書作成支援、内部監査対応、教育研修、審査立ち合いなど、支援項目ごとの内訳が費用項目に反映されているか不明瞭な場合、後から追加費用が発生する可能性があります。

また、月額制、成果報酬型、パッケージ型など、料金形態にも複数の方式があるため、料金形態の違いも費用総額が変動する要因となります。それ故に、自社の体制や予算に合った契約形態を選び、見積取得の段階で不明点を残さず、契約内容を丁寧に確認しておく必要があります。契約締結前に詳細を確認することは、後々のトラブル回避にもつながります。

自社の業務や課題に対する理解があるか

自社の業務や課題に対する理解があるかという視点も、ISO27001コンサルタント会社の選定時に役立ちます。情報セキュリティマネジメントシステムは、ISO27001規格に適合するだけでなく、実際の業務プロセスと整合して初めて実効性を発揮するためです。

コンサルタントが企業・組織ごとの業種特性や事業内容、部門間の連携状況などを的確に把握できているかが、認証取得の確実性やシステム運用の成否を大きく左右します。

形式的な提案や汎用的な雛形を当てはめた支援ではなく、企業・組織固有のリスクや運用課題を反映した提案内容かを見極める必要があります。コンサルティングの質は、現場理解の深さに比例するといっても過言ではありません。

初回の打ち合わせやヒアリング時に、企業・組織の内情を深掘りした具体的な質問がなされるか、課題に対してどのような提案をされるかを見極めれば、コンサルタント会社の理解度を推察できるでしょう。

総括

ISO27001コンサルタントは、認証取得の確実性を高め、運用体制の整備や認証維持を支援する専門家として、多くの企業・組織で活用されています。コンサルタント会社によって支援範囲や料金体系に差異があるため、自社の体制や課題に即した選定が不可欠です。

初めて認証取得を目指す場合に限らず、社内リソースが不足している状況や、客観的な視点によるチェック体制の構築が求められる場面においても、有効な選択肢となり得ます。

当記事で紹介したISO27001コンサルタントの依頼時に見込まれる効果、自社に適した選び方が依頼先選定時の参考になれば幸いです。

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この記事の編集者

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