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ISO9001は、製品やサービスの品質を継続的に向上させ、顧客満足の最大化を図ることを目的とした品質マネジメントシステムの国際規格を指します。国際標準化機構(ISO)により策定され、現在では170カ国以上で広く採用されています。
ISO9001規格の認証に準拠した品質マネジメントシステムの導入や、運用の実効性を確保するには、専門的な知識と経験が必要です。それ故に、認証取得や体制整備を円滑に進めることを目的として、ISO9001コンサルタントの支援を受ける企業も少なくありません。
ISO9001コンサルタントは、規格の要求事項に基づいた仕組みづくりや文書作成、内部監査や教育訓練など、多方面にわたって企業・組織を支援する専門家です。
本記事では、ISO9001コンサルタントの業務内容、活用する意義、費用の目安、ならびに依頼先選定時の比較基準について解説します。
ISO9001コンサルタントとは
ISO9001コンサルタントとは、国際規格である品質マネジメントシステム「ISO9001」の導入および運用を支援する職業・人材を指します。企業や組織が規格の要求事項に適合した体制を構築し、効果的に運用していくための助言や実務支援を専門としています。
以下では、ISO9001コンサルタントの具体的な業務内容や必要な資格・スキル、着任するまでの一般的な経歴を解説します。
ISO9001コンサルタントの業務
ISO9001コンサルタントは、企業・組織がISO9001認証を取得し、その後も適切に品質マネジメントシステム(QMS)を運用・維持していくための支援を行います
企業や組織から依頼に基づき、まず現状の業務プロセスを精査した上で、ISO9001の要求事項との乖離を明らかにする「ギャップ分析」を実施します。その分析結果を踏まえ、品質方針の策定や品質目標の設定、業務フローの見直しと整備、手順書や社内規程などの作成支援へ移行します。
加えて、従業員に対する教育訓練の実施や、内部監査の計画および実施支援、マネジメントレビューの準備も、コンサルタントの重要な役割です。認証審査時には、審査対応の支援や是正措置への助言を行い、円滑な認証取得を後押しします。
認証取得後においても、マネジメントシステムの体制を継続的に改善しつつ、認証を維持するための対応を支援する形で伴走支援することも少なくありません。
ISO9001コンサルタントの業務は、単なる認証取得の代行ではなく、組織の品質向上体制構築を支えるパートナーとしての役割を担っています。
ISO9001コンサルタントに求められる資格・スキル
ISO9001コンサルタントに、必須の資格はありません。しかし、企業の品質マネジメント体制に深く関与するうえに、実効性のある支援が求められることから、深い知識や経験を証明する必要があります。スキルを証明する手段の一つが資格です。
ISO9001コンサルタントの代表的な資格として、ISO9001審査員資格(審査員補含む)が挙げられます。この資格は、第三者認証機関における審査業務への従事に必要とされる、ISO規格に対する深い理解と実務的な運用知識を証明するものです。コンサルタントとして従事するうえで必須の資格ではないものの、審査員目線で的確なコンサルティングが実施できる証明になり、顧客の信頼獲得につながるでしょう。
そのほか、品質管理に関する国家資格の品質管理検定(QC検定)も、品質管理に関する基礎知識を証明する資格のひとつです。
スキル面では、ISO9001規格の要求事項に対する正確な理解、企業・組織ごとに異なる業務フローの分析能力が必要とされます。また、文書作成力や内部監査、登録審査や定期審査(サーベイランス審査)への対応力も求められます。
さらに、クライアント企業の業種や業務内容を理解したうえで、的確な改善方法を助言できる提案力も不可欠です。ISO9001コンサルタントには、知識と実務力の両面において、専門性と柔軟な対応力を兼ね備えた資質が求められます。
ISO9001コンサルタントになる人の経歴
ISO9001コンサルタントの経歴は多岐にわたります。共通しているのは、品質管理やマネジメントシステムに関する実務経験と専門知識を有している点でしょう。
製造業やサービス業などで品質保証部門・生産管理部門のほか、総務や経営企画部門などに従事した経験やISO9001の運用や社内監査、外部審査対応などに携わってきた経歴をもつ人もいます。
ISO9001コンサルタントは、企業在籍時にISO9001の認証取得プロジェクトの責任者を務めた後、独立してコンサルタントに転身するケースも少なくありません。そのほか、認証機関でISO審査員として業務経験を積み、コンサル業に転向する場合もあります。
ISO9001コンサルタントは、実務経験の比重が大きく、学歴よりも実務力が重視される傾向にあります。企業の事情に即した柔軟な提案や、実務レベルでの運用支援が可能なことが、信頼されるコンサルタントの資質と言えるでしょう。
企業がISO9001コンサルタントを必要とする背景
ISO9001コンサルタントが必要とされる背景には、ISO9001の要求事項に企業・組織の内部リソースのみで対応することが難しいという点が挙げられます。ISO9001規格認証を取得・維持するには、品質マネジメントにおいて、方針や目標・プロセスの管理、内部監査など、あらゆる要素を網羅しなければなりません。
企業・組織単独でISO9001認証取得を目指す場合でも、膨大な工数や時間を要します。
そこで以下では、ISO9001コンサルタントへの依頼が必要な企業の特徴や具体例を解説します。
ISO9001コンサルタントへの依頼が必要なケース
ISOコンサルタントへの依頼が必要になるのは、はじめて認証取得を目指す企業・組織や、社内リソースが不足している場合です。ISO規格の要求事項を正確に理解し、実務に落とし込むには高度な知識と経験が求められます。
中でも、はじめて認証を取得する企業においては、十分な知見が蓄積されていないことから対応すべき事項の優先順位を的確に判断できず、認証取得を円滑に進めることが困難な場合があります。また、内部リソースに余裕のない企業・組織では、日常業務と並行して品質マネジメント体制を構築・運用するのは困難であり、外部専門家の支援が不可欠です。
そのほか、第三者の視点で客観的に企業の体制をチェックし、将来的なリスクを回避する目的でのコンサルタント活用も推奨されます。
ISO9001認証の取得・維持に際してコンサルタント活用は必須ではないものの、ノウハウや経験、リソースが不足している場合や、チェック体制の強化を図りたい場合には活用を検討すると良いでしょう。
自社の状況と照らし合わせて、コンサルタントの活用を認証の取得までに限定せず、運用体制の維持に対する必要性も含めて検討するのが理想です。
ISO9001認証取得を外部支援に頼ることで得られる効果
ISO9001コンサルタントを依頼した際に得られる効果として、以下3項目が挙げられます。
- ISO9001を構築・運用する自社工数・人件費の削減
- 審査時の指摘事項・不適合に関する改善処置の効率化
- 文書管理の効率化
以下では、ISO9001認証の取得および維持にあたり、各項目が企業・組織にどのような形で貢献するのかを解説します。
ISO9001を構築・運用する自社工数・人件費の削減
ISO9001認証の取得・運用にあたり、コンサルタントによる支援を受けることで、自社工数・人件費の削減効果が期待できます。
認証取得には手順書・規程などの書類整備や、内部監査の実施、定期審査(サーベイランス審査)・更新審査への対応など、多岐にわたる業務が発生します。これらを自社の限られたリソースで対応する場合、業務負担が増加し、生産性の低下にもつながりかねません。
ISO9001コンサルタントの活用は、認証取得・維持に必要な行程を的確にリードし、要点を押さえた円滑な進行を実現します。内部リソースを通常業務に集中できることから、コスト削減と業務効率の向上にも寄与するでしょう。
また、工数削減は単なる人的コストの抑制にとどまらず、認証取得までの期間短縮や、品質マネジメント体制の早期安定など、副次的効果にもつながります。
審査時の指摘事項・不適合に関する改善処置の効率化
不適合というと“不適格業者”のようなイメージを持つ場合もありますが、必ずしもそうではありません。不適合には重大(メジャー)と軽微(マイナー)があります。いずれも適切に是正処置を実施すれば認証に大きな影響はありません。軽微な不適合、あるいは観察事項や改善の機会といった指摘事項はもっとよくするための改善のヒントや可能性を示唆したものであり、自分たちでは気が付かない発見なので、むしろ“宝の山”のようなものです。
とはいえ、重大な不適合は望ましくありません。認証の一時停止措置や、取り消し措置につながりかねないためです。
ISO9001認証取得・維持に向けたコンサルタントの活用は、重大な不適合を回避しつつ、より良い体制の構築につながる的確かつ効率的なサポートが受けられる恩恵があります。ISO9001認証規格の要求事項は、必要に応じた文書や記録の整備から、運用の実効性に至るまで、多岐にわたって厳格な基準が設けられています。
社内リソースのみで対応する場合、適切な体制の構築に時間がかかるうえに、業務負担の増加にもつながりかねません。
コンサルタントを活用し、要求事項への適合状況を審査前の段階で第三者視点から客観的に確認することは、重大な不適合の抑止と、より良い品質マネジメントシステムの構築を両立できるでしょう。また、重点的に審査される項目に対する準備の精度も高まり、審査通過の確度も向上します。
文書管理の効率化
コンサルタントの活用は、ISO9001認証取得・維持における文書管理の効率化にも寄与します。品質マネジメントシステムの有効性を担保するためには、品質方針や手順書、記録類など多数の文書整備・管理体制の強化が不可欠です。
しかし、はじめてISO9001認証の取得に着手する企業にとって、必要な文書の種類や整備方法を判断すること自体が業務負担となります。
ISOとは“マニュアルや規程、手順書を作成し、その通りに運用すること”と誤った認識を持つコンサルタントが一部存在します。しかし、規格の本質的な考え方は“文書は組織が必要と考えるものを作成すればよい”という考え方であり、。規格自体が一律にマニュアルや手順書の作成を求めているわけではありません。
マニュアルや規程、手順書に基づく運用は完全に誤っているわけではありません。が、はじめにマニュアルを整備し、それに付随して規程や手順書、書式を形式的に整えるという考え方は誤りです。特に、最近認証に取り組む企業は起業して間もない、あるいは企業規模が小さいというケースが多数を占めます。
このような企業にとって、過剰に作り込まれた文書群やページ数の多い文書は、運用開始後に維持管理が困難になる恐れがあります。従って、ISO導入を支援するコンサルタントを選定する際には、文書化に対する方針や、過去に支援した企業における実際の文書構成とその運用状況について、事前に確認することが重要です。
コンサルタントは、規格に即した文書体系の構築と、実務に即した運用方法を熟知している専門家です。認証取得・維持に必要な文書の選定やフォーマット整備、更新手順の明文化など、効率的かつ実用的な文書管理体制の構築を支援します。結果的に、過不足のない文書作成につながり、管理ミスの抑止や担当者の負担が軽減も実現可能です。
文書整備の円滑な進行により、品質マネジメントシステム全体の運用効率が向上し、PDCAサイクルをはじめとする品質改善の仕組みが、より安定的かつ継続的に機能するようになります。
このように、ISO9001コンサルタントへの依頼は、自社にノウハウをもたない企業にとって、多くの効果が見込まれます。
・ISO9001コンサルタント活用にかかる一般的な費用相場
ISO9001コンサルタントへの依頼にかかる費用相場は、1年間で認証を取得できた場合で約36万円~100万円が目安です。ただし、この金額はあくまで一般的な範囲であり、実際の費用は企業の規模や業種、支援範囲によって変動します。また、依頼先のコンサルティング会社の料金体系(一括性・月額制・成功報酬制など)にも大きく左右されます。
そのため、契約前に見積書を取得し、支援範囲や費用の内訳を明確に把握しておく必要があります。また、コンサルタント費用を検討する際は、自社の従業員が同様の対応を行った場合の人件費と比較し、コストパフォーマンスの観点から費用対効果を評価する必要があります。
ISO9001コンサルタント依頼時の認証取得までの流れ
- 現状分析(ギャップ分析)
- 計画立案・スケジュール調整
- 品質方針・手順書・記録書などの文書整備
- 従業員への教育・研修の実施
- 運用開始
- 内部監査の実施
- マネジメントレビュー
- 審査機関による審査
- 指摘事項の是正対応・不適合箇所の改善・修正
- 認証取得
ISO9001コンサルタントを活用することで、規格の要点を押さえた効率的なスケジュールの調整、必要な文書作成や内部監査の手順などの的確な指導を受けられます。結果として、社内の負担を軽減しながら、短期間での認証取得も実現するでしょう。
ISO9001コンサルタント会社の選び方
自社に最適なISO9001コンサルタント会社を選ぶには、以下の4項目で比較検討する必要があります。
- 実績の豊富さ
- 自社の事業、業界に対する知識(あれば経験)
- サポート範囲
- 担当者との相性
- 料金体系の明確さ
各項目において、重視すべき具体的な比較点について解説します。
実績の豊富さ
ISO9001コンサルタント会社を選定する際、実績の豊富さは重要な判断基準の一つです。ただし、支援件数の多さだけでなく、自社と同業種・同規模の企業への支援経験の有無を確認する必要があります。また、初回の認証取得に向けた支援だけでなく、維持のための定期審査(サーベイランス審査)や更新審査への対応実績があるかの確認も必要不可欠です。加えて、審査時に指摘や不適合判断されることが少ないか、という点も支援の質を見極める有効な判断材料です。
自社の事業、業界に対する知識(あれば経験)
ものづくり、品質に対する考え方、プロセスが業種・業界により、異なります。例えば、製造業の場合、品質とは仕様書や設計書に規定された寸法、強度、重さ等で製造の途中でも不具合を出さないが基本となります。一方、ソフトウェア開発の場合、納品やリリース前の段階で多くの不具合を検出し、それらをつぶす、対応することにより品質を高めていきます。製造業の感覚でソフトウェア開発の品質は語れませんし、その逆も然りです。従って、自社の事業や業界に対する知識は必要となります。
サポート範囲
ISO9001コンサルタント会社を選定する際は、提供される支援の範囲について比較検討を行う必要があります。コンサルタントによって、提供される支援内容が大きく異なるため、自社が必要とする支援内容を過不足なく受けられるかどうか、事前に十分な確認を行うことが求められます。
例として、ISO規格の要求事項に沿ったマニュアルや帳票の作成支援のみを支援する場合もあれば、内部監査の実施支援や社員向けの教育研修を行う場合、あるいは、認証取得後の体制構築支援まで一貫して行う会社もあります。
コンサルタント会社による支援範囲の差は、円滑な認証取得に影響するだけでなく、その後の運用定着にも直結します。実効性のある品質マネジメントシステムの体制を構築したい場合は、支援範囲の広さや実務的支援まで踏み込んだ対応が可能かを、事前に確認することが肝要です。
担当者との相性
ISO9001コンサルタント会社の選定では、担当コンサルタントとの相性も重要な判断基準となります。品質マネジメントシステムの構築から認証取得、運用支援まで依頼した場合、コンサルタントとの関係は半年から1年以上に及ぶことも少なくありません。
それ故に、相談しやすい担当者か、専門用語をかみ砕いて解説してもらえるか、あるいは対応力を確認しておく必要があります。中でもメールや電話対応の迅速さは重要な要素です。自社に寄り添う姿勢を見極めるうえで、重要な判断基準となります。
初回打ち合わせ時の受け答えや、問い合わせ・見積りを依頼した際の対応速度などから、担当者との相性を判断するよう心がけるとよいでしょう。
料金体系の明確さ
ISO9001コンサルタント会社を選定するには、料金体系の明確さも重要な判断基準となります。コンサルティング費用は企業規模や支援範囲に応じて大きく変動するため、費用の総額のみをもって判断することは適切とは言えません。
具体的には、文書作成支援や内部監査、教育研修の実施、審査対応など、各支援項目に対して個別に費用が設定されているかの確認が必要です。また、追加費用の有無や支援内容との費用対効果の妥当性についても、あわせて比較・検討すると良いでしょう。
見積りを取得する段階で、料金の詳細を事前に把握しておけば、契約後のトラブル抑止につながります。
総括
ISO9001コンサルタントの活用は、認証取得の確実性を高めるだけでなく、取得後の認証維持や品質マネジメントシステムの体制強化においても有効な手段です。
ISO9001規格は、品質マネジメントシステムの国際規格であり、要求事項に適合した体制の構築によって、信頼性の向上や業務の標準化・効率化を実現可能です。
ISO9001の認証取得にあたっては、自社の組織体制および抱えている課題の内容を踏まえたうえで、コンサルタントを活用すべきか否かについて慎重に検討することが求められます。
この記事の編集者

QFSjapan編集部
ISO審査・認証サービスを提供する「株式会社QFSjapan」が運営。ISOを新たに取得する方や、すでに運用中の方のお悩みや知りたいことを中心にお届けします。ISOの専門家として、信頼できる情報をISO初心者の方でも分かりやすくお伝えできるよう心掛けていきます。