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品質管理体制の強化を目的とするISO9001、および情報資産の保護・管理体制の強化を目的とするISO27001は、いずれも現代の企業活動において極めて重要な役割を果たす国際規格です。
これらの規格に準拠した管理体制の構築、認証の取得により、リスクマネジメントの高度化、取引先に対する信頼性の向上、さらには公共事業等の入札における競争優位性の確保といった効果も期待されます。
両規格はその目的、管理対象、運用上のアプローチにおいて大きな差異があり、それぞれの特性を正確に理解したうえで、自社の事業内容および経営方針に即した適切な規格の選定が不可欠です。
本記事においては、ISO9001およびISO27001の概要ならびに両者の相違点を明らかにするとともに、各規格の認証取得企業に共通して見られる傾向についても解説します。
ISO9001とは
ISO9001とは、企業・組織の品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格です。国際標準化機構(ISO)が制定しており、あらゆる業種・規模の組織を対象としています。
企業・組織では、経営方針と整合した品質方針の策定、顧客要求事項の的確な把握、業務プロセスの管理、リスク及び機会への対応など、管理体制の体系的な構築が不可欠です。ISO9001認証の取得は、社内体制の標準化や業務の効率化が進むほか、対外的な信頼性の確保にも寄与します。以下では、ISO9001の概要や認証を取得するメリットについて解説します。
ISO9001の概要と目的
ISO9001は、品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格であり、製品およびサービスの品質を継続的に改善し、顧客満足度の向上を実現する管理体制の構築を目的としています。
あらゆる業種・規模の組織に適用可能な規格であることから、経営と品質管理を統合し、戦略的な意思決定を支援する目的での導入も可能です。ISO9001の導入により、組織全体の品質管理に対する意識も向上するため、業務の標準化および効率化にも効果があります。管理体制の維持による品質の担保は、対外的な信頼性の確保につながり、競争優位性の強化にも寄与するでしょう。
ISO9001を取得するメリット
ISO9001の取得により、組織の内部体制および対外的な評価の両面において、多くのメリットが見込まれます。品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格に準拠した管理体制の整備により、業務プロセスが標準化され、属人化の抑止、作業効率の向上が期待されます。
業務上のミスおよび非効率業務の削減、コストの抑制、納期遵守率の改善につながるなど、自社・自組織における業務課題への対策としても有効です。ISO9001の要求事項への適合は、品質方針や目標が明確になる恩恵もあります。
また、従業員の意識改革促進により、企業・組織全体として品質向上への取り組みが強化されます。第三者機関による認証審査を通じて、取引先および顧客からの信頼性が向上するほか、入札・新規取引における競争優位性の確保にも認証の取得が有効です。とりわけ製造業・建設業などでは、取引条件として指定されていることも多く、認証の取得が求められます。
ISO9001の要求事項には、継続的改善の仕組みが組み込まれており、環境変化への対応力を備えた柔軟な組織運営の実現を支援します。ISO9001の取得は、組織の成長と持続的な競争力の強化に資する有効な手段です。ISO9001規格の要求事項に対する継続的な適合は、国際的な基準に準拠した品質マネジメント体制の構築につながります。
ISO27001とは
ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格です。ISO9001と同様に国際標準化機構(ISO)が策定しており、企業・組織が保有する情報資産の機密性・完全性・可用性を確保するための管理体制の構築に活用されています。
なお、ISO/IEC27001という表記を見ることがありますが、同じ意味で使われています。IECとは国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のことで、電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関で構成しています。
ISO27001シリーズはISOとIECが共同で開発した規格と理解していただければと思います。
ISO27001では、リスクアセスメントに基づく管理策の選定、施策実施後の継続的な運用と改善の維持が求められます。企業・組織の業種や規模を問わず適用可能であるのも、ISO9001と同様です。以下では、ISO27001の概要や取得するメリットについて解説します。
ISO27001の概要と目的
ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格として、企業・組織が保有する情報資産の適切な保護・管理体制の構築を目的としています。機密性・完全性・可用性の観点から、組織運営における多様な情報セキュリティ上のリスクを未然に抑止するための取り組みです。
対象業種に制限はなく、企業・組織の機密技術および顧客情報、業務データなどを取り扱うすべての組織で適用可能です。ISO27001では、リスクアセスメントによって業務フローおよび業務環境における、危険性・有害性・脅威・脆弱性などを特定し、必要な管理策を選定・導入します。
導入後も、管理体制、運用状況の監視や評価を通じて、継続的な改善の実施が不可欠です。ISO27001の取得は、情報漏洩や改ざん、サービス停止など、企業・組織運営に影響をおよぼすインシデントの未然抑止につながります。
ISO27001を取得するメリット
ISO27001の取得は、企業・組織の内部統制において、セキュリティインシデントの抑止につながる体制が構築できるメリットが見込まれます。情報資産に対するリスクを規格の要求事項に基づいて体系的に分析し、適切な管理策を講じることで、情報漏洩・改ざん・不正アクセスといったセキュリティインシデントの予防が可能です。
業務プロセスに国際規格に準拠した情報セキュリティ対策を組み込むことにより、属人的な対応から脱却し、組織全体として一貫性のある管理体制が確立されます。ISO27001は国際的に広く認知された規格であるため、顧客および取引先に対して、情報管理の信頼性を証明するうえでも有効な手段です。
とりわけ機密情報をあつかう契約、および政府公共機関による公共調達などにおいては、認証の有無が取引の前提条件となる場合もあります。認証の取得により、法令や契約上の遵守事項に対する適合性を継続的に見直す仕組みが整備されるため、ISO27001はコンプライアンスの強化にも資する制度といえます。
ISO27001は情報セキュリティの向上、情報管理体制の構築・維持などの内部統制の強化のみならず、企業価値の維持・拡大など対外的な信頼性向上にも大きく貢献する規格です。ISO27001の要求事項への適合により、世界基準に準拠した情報セキュリティマネジメントシステムの管理体制の構築が実現します。
ISO9001とISO27001の比較
ISO9001とISO27001には共通点と相違点があり、導入する際は、双方の共通点ならびに相違点を理解したうえでの選定が不可欠です。
比較項目 | ISO9001(品質マネジメント) | ISO27001(情報セキュリティマネジメント) |
---|---|---|
規格の導入目的 | 顧客満足度の向上、品質の維持・継続的改善 | 情報資産の保護、リスク管理の徹底、セキュリティインシデントの発生抑止 |
適用対象 | あらゆる業種・規模の組織 | 情報をあつかうすべての組織 |
管理対象 | 製品・サービスの品質、業務プロセス | 事業に関連する情報やデータ、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、サービス等の情報システムを含む資産 |
主な要求事項 | 品質方針の策定、管理体制の是正処置など | リスクアセスメント、管理策の実施、監視など |
ISO9001とISO27001を比較し、共通点と相違点についてより詳しく解説します。
共通点
ISO9001とISO27001は、いずれもマネジメントシステムの国際規格であり、共通する構造と運用原則を有しています。最大の共通点は、ISOが定めた「Annex SL」という共通フレームワークに基づいて策定されている点です。これにより、規格ごとの章構成や用語が統一されるため、マネジメントシステムの統合運用も可能となります。
両規格は、リスクおよび機会への取り組み、継続的改善、トップマネジメントの関与、パフォーマンスの評価といった基本要素を重視している点も共通する項目です。計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Act)からなる、「PDCAサイクル」を基盤とした改善施策を実施し、企業・組織の管理体制における最適化の継続も要求しています。
ISO9001とISO27001は、情報の管理、内部監査、マネジメントレビューなど、運用面においても共通要件が多く、いずれも組織全体の統制力と信頼性の向上に寄与する規格です。
相違点
ISO9001とISO27001は、いずれも国際的なマネジメントシステムの規格である一方で、目的および管理対象において明確な相違点があります。ISO9001は「品質マネジメントシステム」に関する規格であり、製品やサービスの品質を継続的に改善し、顧客満足度の向上がおもな目的です。業務プロセス全体を対象とし、顧客ニーズの把握や品質目標の設定、是正処置の実施を中心としています。
一方、ISO27001は「情報セキュリティマネジメントシステム」に関する規格で、情報資産の機密性・完全性・可用性を確保し、情報セキュリティリスクの適切な管理が目的です。ISO27001ではリスクアセスメントから着手したのち、情報セキュリティに関連するリスクをどのように管理、低減するかという視点で多角的に施策を実施します。
ISO27001の管理対象となるのは組織が保有するあらゆる情報資源です。リスクアセスメントの実施に加え、管理策の導入およびアクセス制御、教育訓練の実施などが求められます。
このように、ISO9001は「品質」に焦点を当てているのに対し、ISO27001は「情報セキュリティ」を重視していることが大きな相違点です。双方に異なる課題への対応を推進するものであり、適用範囲および優先的な管理項目にも差異があります。
ISO9001とISO27001のどちらの認証を取得するか選ぶ際には、共通点と相違点を理解したうえで、企業の実情に必要なマネジメントシステムの選定が求められます。
ISO9001とISO27001を取得する企業の特徴
ISO9001およびISO27001を取得する企業には、いくつかの共通した特徴が見受けられます。
項目 | ISO9001取得企業の特徴 | ISO27001取得企業の特徴 |
---|---|---|
おもな導入目的 | 顧客満足度の向上、品質の維持・継続的改善 | 事業やサービスの継続、情報資産の保護、セキュリティリスクの低減 |
経営姿勢 | 業務品質を重視し、プロセスの標準化と効率化を追求 | 情報リスクを重視し、セキュリティ管理体制の強化に注力 |
組織文化 | 品質マネジメントを企業・組織全体に浸透させ、改善意識を醸成 | セキュリティ意識の共有と機密保持体制の徹底に注力 |
おもな業種 | 製造業、建設業、物流業、サービス業など | IT・情報通信業、ビルメンテナンス、リサイクル事業、金融業、医療機関、教育機関など |
共通点 | 国際認証による信頼性向上、マネジメント体制の整備、継続的改善の重視 | 国際認証による信頼性向上、マネジメント体制の整備、継続的改善の重視 |
ISO9001およびISO27001を取得する企業は、顧客・取引先との信頼関係の構築を重視し、第三者認証の取得によって対外的な信用力を高めようとする姿勢が共通しています。
また、企業・組織全体のマネジメント体制を見直し、体系的な強化に努める傾向があるのも共通点の一例です。継続的な改善活動および法令遵守を重視しているほか、内部統制・管理体制の適正化を積極的に推進している点も特筆されます。
ISO9001とISO27001のどちらを取得すべきか検討する際の参考になれば幸いです。
ISO9001とISO27001を統合する方法とは
ISO9001とISO27001は、いずれもISOの共通構造「Annex SL」に基づいて設計されているため、同時認証の取得、統合的な運用が可能です。統合の際には、リスクおよび機会の管理、内部監査、マネジメントレビューなどの共通する施策を一元化し、品質と情報セキュリティの双方を網羅したマネジメントシステムを構築します。
これにより、業務の効率化と管理体制の強化が図られるだけでなく、品質管理と情報セキュリティの管理を同時に高められます。統一された方針や教育・管理体制を通じて認識を共有できるため、企業・組織全体の意識向上を図るうえでも有効な手段です。
ISO9001とISO27001の統合により、審査工数を削減できる場合もあります。審査対応・認証取得にかかる業務なども統合され、管理体制の重複抑止・効率化につながります。
総括
本記事では、ISO9001とISO27001の概要や違い、両者の取得企業の特徴を解説しました。両規格は、目的および管理対象に相違はあるものの、ISOの共通構造に基づいて策定されており、統合的な運用が可能です。
統合運用を行えば、品質管理と情報セキュリティ管理の両面から、企業・組織の管理体制強化につながります。一方で、効率的な認証取得、マネジメントシステム運用体制の最適化を図るには、両規格の特性と統合による相乗効果に対する正確な理解が不可欠です。
ISO9001とISO27001は、適応範囲や目的が異なります。自社の特徴や実情に応じた取得規格の選定が求められます。
この記事の編集者

QFSjapan編集部
ISO審査・認証サービスを提供する「株式会社QFSjapan」が運営。ISOを新たに取得する方や、すでに運用中の方のお悩みや知りたいことを中心にお届けします。ISOの専門家として、信頼できる情報をISO初心者の方でも分かりやすくお伝えできるよう心掛けていきます。