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ISO認証の取得は、自社が提供する製品およびサービスの品質、ならびに事業運営体制を国際基準に適合させるものであり、企業の信頼性向上および市場における競争力の強化に資する有効な手段の一つと位置付けられます。
ISO認証を取得するにあたっては、所定の審査機関(認証機関と呼ばれる場合も)による審査を受ける必要があり、その際に発生する審査費用は、対象となる規格の種類、企業規模、業種、さらには審査機関ごとの料金体系など、複数の要因により変動します。したがって、認証取得に先立ち、費用の算定方法や内訳を十分に把握したうえでの適切な予算計画策定が不可欠です。
本記事では、ISO認証取得にかかる審査費用の構造、代表的な算定方法、ならびに一般的な費用相場について解説します。
ISO規格における審査の基本情報
ISO規格における審査は、企業や組織が国際標準にもとづくマネジメントシステムを適切に構築し、運用できているかを確認するため、審査機関が実施する客観的評価です。審査には、初回認証審査のほか、定期審査(サーベイランス審査)・再認証審査(更新審査)があり、取得および維持などの目的に応じた検証が行われます。
ISOの審査では、企業・組織が構築・運用するマネジメントシステムが、ISO規格に適合しているかどうかを第三者の立場で、審査機関が審査・認証を行います。審査機関は、対象となるISO規格(例:ISO 9001、ISO 14001、ISO 27001など)ごとに専門の審査員を有しているのも特徴です。文書審査や実地審査を通じて、企業のマネジメントシステムが規格に適合しているかを評価します。
審査機関によって審査の進め方や費用、対応の柔軟性に差があるため、自社・自組織の状況を踏まえ、コンサルタントの活用も視野に入れた比較検討が推奨されます。
ISO審査の目的
ISO審査は、企業・組織が構築・運用しているマネジメントシステムについて、第三者視点による客観的な検証を目的として実施されます。品質、環境、情報セキュリティなどの各分野において、企業・組織が一定の管理水準を満たしていることを対外的に証明する手段の一つです。
ISO審査は、単に要求事項への適合性を確認するだけでなく、業務プロセス上の課題やリスクを洗い出し、継続的改善につなげる契機としての役割も担っています。認証の取得は、取引先や顧客からの信頼性向上に資するとともに、法令遵守や社会的責任への対応を強化するものです。
標準化されたマネジメントシステムの運用を通じて、属人的な業務からの脱却を図り、管理体制の構築による企業・組織運営の安定化にも寄与します。ISO認証の取得は、マネジメントシステムの運用を通じた経営基盤の強化、および組織の持続的成長に寄与する重要な手段です。ISO審査を通じて、マネジメントシステムの要求事項に対する適合を証明する必要があります。
ISO審査の種類
ISO規格では、初回認証審査(取得審査)だけでなく、定期審査(サーベイランス審査)・再認証審査(更新審査)が実施されます。
初回認証審査(取得審査)
初回認証審査(取得審査)とは、ISO認証をはじめて取得する際に実施される初回審査です。一般的には、「第一段階審査(マネジメントシステムの構築状況の確認))」と「第二段階審査(マネジメントシステムの運用の確認)」の二段構成となっており、第一段階では規格が求める文書化の程度等、マネジメントシステムの構築状況を確認します。
第二段階では、現場におけるマネジメントシステムの運用実態が、規格の要求事項に適合しているかを実地審査によって検証します。実地審査では、審査員から質問される内容に対して円滑に回答するため、想定質問の準備が不可欠です。第一段階審査と第二段階審査を経て認証登録されます。
定期審査(サーベイランス審査)
定期審査(サーベイランス審査)は、ISO認証取得後、マネジメントシステムの継続的な有効性を確認する目的で最低年1回実施される審査です。3年間の認証有効期間中に毎年実施されるものであり、運用状況および内部監査の実施、マネジメントレビュー、是正処置・予防処置の実行状況などがおもな審査対象となります。
初回審査とは異なり、認証取得後のマネジメントシステムが継続・維持されているか、改善履歴や過去の審査における指摘事項の是正状況などが確認される審査です。重大な不適合が指摘された場合は、別途再審査が実施されます。再審査で改善処置・是正処置が確認できなければ、認証の一時停止処置や取り消し処置がとられる可能性があります。ISO認証が定める継続的な改善実施の観点からも、定期審査(サーベイランス審査)で要求事項への適合証明が不可欠です。
再認証審査(更新審査)
再認証審査は、ISO認証の有効期間(通常3年)が終了する前に実施される、包括的な再評価審査です。更新審査とも呼ばれており、取得済みの認証に関するマネジメントシステムが継続的に運用され、かつ規格の要求事項に適合し続けているかを広範に確認します。
定期審査(サーベイランス審査)の結果に加えて、ほかの審査同様に改善履歴、法令遵守状況も審査項目に含まれ、組織全体のマネジメント能力が問われる審査です。再認証審査で承認されれば、新たに3年間の認証有効期間が付与され、ISO認証も維持されます。
定期審査(サーベイランス審査)よび再認証審査(更新審査)で重大な不適合が判明し、再審査でも改善処置・是正処置が確認できなければ、ISO認証が取り消される可能性があります。その場合、再度認証を取得するには、初回と同様の取得審査の受審が必要です。
取り消し後の再認証審査は「再認証」ではなく「新規認証」として扱われるため、第一段階審査、第二段階審査の実施となります。取り消し後の再認証取得には時間とコストがかかるため、認証維持の重要性を十分認識したうえで、ISOマネジメントシステムの構築・維持が求められます。
ISO規格の認証を取得するにあたっては、認定を受けた審査機関による所定の審査を受け、当該規格の要求事項に対する適合性を客観的に証明する必要があります。
ISO規格における審査費用の仕組み
ISO認証に必要な審査費用は審査機関に支払います。審査費用は、初回認証審査、定期審査(サーベイランス審査)、再認証審査(更新審査)の各段階で発生するものです。
審査機関、企業の規模および事業内容、各規格(ISO9001、14001、27001、45001)の専門性の業種、審査工数(審査日数)などによって異なります。審査費用には、審査員の旅費や登録料などの実費も含まれる場合があるのも特徴です。
コンサルタントを活用する場合は、別途コンサルタント会社に依頼するための「コンサルタント費用」が発生します。コンサルタント会社を活用しない場合は、審査費用のみの負担となります。
審査費用は複数年にわたる維持管理を前提としており、審査費用のみならず、マネジメントシステムの管理体制を維持するための費用を長期的な視点での予算化が肝要です。
審査費用の種類
ISO認証に伴う審査費用は、複数の費目で構成されています。ISO認証審査で必要になる「審査費用(審査工数費)」は、審査員がマネジメントシステムの構築および現地の運用状況や管理体制を確認する作業に対して発生する費用です。
そのほかの費用項目として「登録料」があり、これは審査完了後に審査機関が正式な認証登録を行う際に必要となります。審査機関によっては、審査費用に登録料が含まれている場合もあります。
また、審査員が現地へ赴く際の「交通費・宿泊費」が発生する場合も、実費での請求が一般的です。さらに、認証維持のためには「定期審査(サーベイランス審査)費用」が年1回以上発生し、3年ごとの「再認証審査(更新審査)費用」も別途必要となります。
審査機関によっては、「申請手数料」や「書類管理費」が追加されるなど、審査機関および審査工数、企業規模・拠点数など、複数の要因によって費用は変動するものです。そのため、審査機関と契約する際は、詳細な内訳の事前確認が必要になります。
審査費用の算定方法
ISO審査費用の算定方法は、おもに「審査工数(審査に必要な日数)」を基準として算出されます。対象とするマネジメントシステムの種別(例:ISO 9001、ISO 14001など)および企業・組織の従業員数、業種におけるリスクレベル、拠点数ならびにマネジメントシステムの適用範囲などが考慮され、必要な審査工数に応じて各規格と業種ごとの審査費用が算出される仕組みです。
従業員数が多く拠点が分散している場合には、審査日数が増加し、費用も加算される傾向にあります。審査機関は、これらの条件を踏まえたうえで、適切な審査員数・工数・日数を設定、工数に応じた単価を掛け合わせた金額が総費用です。
また、初回認証審査、定期審査(サーベイランス審査)、再認証審査(更新審査)の各段階によっても算定基準に差異があるため、状況に応じて見積が提示されます。適正な費用算出のためには、審査範囲および企業・組織規模などの正確な情報提供が必要です。
審査機関により費用に差異がある理由
ISO審査にかかる費用は、同一の規格や組織規模であっても、審査機関によって変動する場合があります。その理由の一つとして、審査員に支払われる報酬体系の差異が挙げられます。審査機関によって、所属している審査員の経験年数や専門性、雇用形態(常勤・非常勤)によって報酬水準が変動し、審査単価に反映されるためです。
また、各審査機関は認定機関(JAB、ANAB、UKAS 、SCCなど)からの審査機関としての認定を維持するため、定期的にロイヤリティや監査関連費用を支払っています。上部団体の認定機関に支払うロイヤリティの負担も、審査費用の構成に影響します。
さらに、審査に付随する事務処理体制や相談対応の充実度、審査方針の柔軟性といった運営面の違いも費用に反映される要因です。以上の点を踏まえ、ISO認証取得にあたって審査機関に審査をする際には、費用面の比較にとどまらず、審査品質や支援体制を含めた総合的な検討が求められます。
ISO規格の審査費用相場
ISO規格における審査費用の相場は、取得時、維持期間中、更新時の各段階に応じて費用項目の構成が異なります。初回取得審査にかかる費用は、50万円から150万円程度が標準的な水準です。ただし、企業・組織の規模および業種、拠点数、適用範囲などにより変動します
審査費用には、第一段階で実施される文書審査、および第二段階の実地審査にかかる費用に加え、認証登録料ならびに審査員の交通費・宿泊費などが加算される場合が一般的です。認証取得後、認証維持のために年1回実施される定期審査(サーベイランス審査)では、審査範囲が限定されることから、審査1回あたり30万円から60万円程度が目安となります。
また、3年ごとに実施される再認証審査(更新審査)の場合、初回と同等の審査範囲が対象となるため、費用は60万円から100万円程度が相場です。費用体系や契約条件には差異があるため、費用だけでなく実績や専門性、契約条件も精査したうえで適切な審査機関を選定する必要があります。
ISO規格の審査費用については各審査機関に個別に問い合わせたうえで、費用体系や提供されるサービスの内容を比較・検討し、自社の予算および要件にもっとも適合する審査機関の選定が求められます。
総括
本記事では、ISO規格の審査費用の算定方法や内訳、費用相場について解説しました。ISO認証の取得を検討する際は、初回取得時の費用だけでなく、維持審査および更新審査に必要な費用も含め、中長期的なコストの把握と予算の確保が不可欠です。
審査機関によって費用構成ならびに算定基準における差異があるため、費用の内訳を確認し、審査対象範囲や支援体制、実績などを踏まえたうえで慎重に比較・検討する必要があります。
また、適正な費用を算出するには、組織の実態に即した正確な情報の提供も欠かせません。正確な情報提供により、見積もり段階で審査工数の算定における過不足の発生を抑止する必要があります。
ISO認証は単なる制度上の認証取得ではなく、組織のマネジメント力や対外的な信頼性の向上を図る経営上の有効な手段です。認証審査を受ける際は、費用の妥当性に加え、審査の質および取得後のサポート体制まで含めた、総合的な視点による審査機関の選定が求められます。
この記事の編集者

QFSjapan編集部
ISO審査・認証サービスを提供する「株式会社QFSjapan」が運営。ISOを新たに取得する方や、すでに運用中の方のお悩みや知りたいことを中心にお届けします。ISOの専門家として、信頼できる情報をISO初心者の方でも分かりやすくお伝えできるよう心掛けていきます。